雨の記憶屋 -星空のタイムスケジュール-

「記憶の場面が、変わりましたね」

店主がぽつりと呟いた瞬間、記憶の空間が少し揺れ、
また新しい断片が流れ込んできた。


彼は花束を手に、仕事帰りのスーツ姿で
花屋から出てきた。

手にした傘をそっと広げ、花束が濡れないよう
傘を寄せながら、ゆっくり歩きだす。

私はその様子を、記憶を通してただ見つめていた。

雨の匂い、傘に当たる水音、
濡れたアスファルトの光――
すべてが、あの日の夜の空気をそのまま伝えてくるようだった。

少し歩いたところで、彼は立ち止まり、
何かを決心したのか、左のポケットからスマホを
取り出し、耳にあてた。


「もしかして、私に電話していた?」


記憶の中の彼は、不安そうな顔で私に話しかけた。


「あ、もしもし?澪? 今、まだ仕事?
うん。あっ、そうか……」