雨の記憶屋 -星空のタイムスケジュール-

彼の遺品、最後に私の手に残ったもの――。
最後に彼が握っていた傘。


何か、大切なものを知ることができる、
不思議とそんな気がしていた。


「いかがなさいますか?」


私は手に握っていた傘を見つめた。

透明のビニール越しに、
店内のやわらかな灯りが淡く揺れている。


あの日の夜から、ずっと手放せなかった傘。


これを失ったら、
本当に健太が遠くへ行ってしまう気がしていた。


それでも――


私は震える手で、ゆっくりと
カウンターの上に傘を置いた。


「お願い……します……」


店主は小さく頷き、カウンターに置いた傘を触れて、
ゆっくりと瞳を閉じた。

その瞬間、ふわりと柔らかな風が店内を包み込む。