雨の記憶屋 -星空のタイムスケジュール-

「ここは、本当に大切な人を
亡くした人だけが辿りつく場所です」


彼女の瞳は、嘘を言っているようには
見えなかった。

店内には微かにコーヒーの香ばしい香りと
雨の香りが混ざり、落ち着いた静けさがあった。


「お客様は、何か大切なものをお持ちですか?」


「大切なものですか?」


「はい。
お客様にとって大切なものがあるなら、
その記憶を辿ることができます」


店主は静かに瞬きをした。
まるで、雨音を聞いているかのように。


窓の外では、細かな雨が静かに降り続いている。



「ただ、記憶を辿ったあと、
その大切なものは消えてしまいます」



大切なものが消える――?
そんなこと、本当にあるんだろうか。