病院に着いた時には、健太は白いシーツの上で
眠るように横たわっていた。
手を握っても、何度名前を呼んでも、
返事は返ってこなかった。
胸の奥で止められない思いが溢れ、息が詰まった。
冷たい病室の中で、私の手に残ったのは――
透明のビニール傘だけ。
看護師さんから渡された時、すぐにわかった。
取っ手が少し擦れていて、
その時はまだ傘がちょっとだけ濡れていた。
彼がいつも持っていた傘だとすぐにわかった。
ちょうど1年前のこの季節だった。
涙が自然と溢れる。
会いたい。
もう一度、会いたい。
そう思った時、細い路地の奥に小さな灯りが見えた。
呼ばれるように、足が向く。
木の扉に小さな看板。
「雨の記憶屋」と書かれている。
迷いながら、ゆっくりと扉を押した。
