けれど、なぜだろう。 不思議と、胸の奥に残っていた重たいものだけが いつの間にか、静かにほどけていた。 遠くで―― また、ほんの一瞬だけ、 雨粒が落ちる音がした気がした。 後ろを振り返ったけれど、 そこには、もう何も見当たらなかった。 ただ、雨上がりの夜の空気だけが 静かに街を包んでいる。 それでもなぜか、 あの路地のどこかで―― また誰かが、 静かに扉を開けているような、そんな気がした。