青春はスクリーンの手前に落ちている


「ご、ごめん、考えごとしてて……どうしたの?」
軽く跳ねるようにリュックの居心地を整えて、聞く。

「落とし物。ん」

スッと伸びてきた手元に視線を落とした。

「え……あっ?!」

差し出されのは、私が中学の頃から映画の分析をして好きなように書き留めたノート。
その表紙には、でかでかと『映画ノート』と書いてある。

自分の内側が丸出しのような、自分だけの…他人には絶対に見られたくない物だった。

私は慌てて柊くんの手からノートを奪い取った。

ノートを抱き抱え半身になる。

「………見た?」

柊くんは「いや」と即答した。
まるで聞かれることを予知していたかのような反応と、どことなく白々しいその表情がどうにも信用出来ない。

「本当に見てない?」

「うん」

「本当?」

「見てないって」

「……ありがとう」

少し疑いつつも、
さすがに嘘ではないと判断しひとまず胸を撫で下ろした。


私はふぅ、と息を吐いてノートをリュックに突っ込む。
いつの間にか階段を降りていた柊くんのうしろを小走りで追いかけた。


「あの柊くん」

「なに」

「部内選考、参加するの?」

興味本位だった。
入部してから1年が経つ。
名匠と呼ばれる映画監督を祖父に持ちながら、彼自身の制作姿は見たことがない。

足を止めた柊くんは振り返る。

「しないよ」

短い言葉が、私の足をピタリと止める。
一線をひかれた気がした。


「あ…そうなんだ」

自分から聞いておいてそんな返ししかできない。

なんとなく、
呼ばれてもないのに振り向いてみたりして間をつなぐ。


「そういう楠木さんは?」

「え?」

「部内選考出るの?」

「ま、まさか。
私は観る専門だから。作るなんて出来ないよ」

「…観るのも才能だと思うけど?」

「いやいや、」


愛想笑いで謙遜するも、内心ドキドキしていた。
観る専なんて、他人に話した事は無い。
自分の秘密をさらけ出したみたいで、なんだか気恥ずかしい。