青春はスクリーンの手前に落ちている

校門を出ると、夏のジリジリとした日差しがアスファルトを照らしていた。

少し遅れてやってきた柊くんを振り返ると、彼もまた背後から太陽に照らされている。
私は眉毛の上に手をかざし、薄目で柊くんを見た。

「こんな時期に外に出るもんじゃねぇな。あちぃ」

顔をしかめながらも、どこか楽しそうに笑っている。

私も「ふふ。あちぃ」とつられて笑うと、ようやく隣に並んで歩き始めた。

ふとアスファルトに伸びる2人の影を見下ろす。

夕方ならもっと影が伸びていい絵になりそうーー

でも口には出せなかった。

「活動時間内に戻んないとだから、あんま遠くは行けないな」

「そうだね」

並んで歩くと、なんだか歩幅が合わなくて妙なリズムになった。
柊くんは一定の速度で歩いてるはずなのに…。

「この時間の外、気温やべーな」
「うん」
「野球部の声ここまで聞こえるわ」
「ほんとだね」
「……」
「……」
「映画ノートって、何冊あんの?」
「うーん、3冊……って、ぇえ?!」
思わず声が裏返る。

うっかり答えた私を見て柊くんはケラケラと笑った。

この人、からかうの趣味なのかな。

「誘導尋問だ…」
「いやいや、普通に聞いただけだし。世間話」
「そうかな」
「楠木さんがテキトーに返事してっから」
「適当…」

私は気まずくて首にぶら下げていたハンディファンで顔の熱を冷ました。


「つーか思うんだけど。
タイムリープ物ってさ、大抵は過去を変える話だよな」

しばらくして柊くんはまた喋り始めた。
映画の話になると、私も自然と緊張が遠のく。

「たしかに…そういう風に見えるのが多いよね」

「そういう風?どういう意味?」
興味深そうに柊くんがこっちを見た。

私は、今まで観てきたタイムリープ系の映画を思い出しながら話をする。

「主人公は過去を変えようとしてるけど、最終的に変わったのは主人公自身…みたいな」
ちらりと柊くんの反応をうかがう。

何かの映画を思い起こしているのか、真っ直ぐ前を見て「あー」とか「うーん」とか言っている。

私は気になりつつも続けた。

「SFちっくだけど、実は人間の哲学的な部分を表現してるんじゃないかな。
演出もそういう部分にフォーカスしてることが多いし………」

そこまで喋って、柊くんの視線を感じたので止まる。

「あ…また喋りすぎた、よね」

「いや?
新しい視点だった。面白いな」

「…。それはよかった」
私はポリポリと頬をかいた。

「なんだそれ」

ハハっと笑う柊くん。
よく、笑うんだな。

太陽が眩しくて、私はまた目を細めた。