扉の鍵を開けてくれたのは


 夏休みがあっという間に終わり、今日から二学期だ。
 二学期始業式の日、昂生がいつも通り迎えに来てくれた。そして、新しいブレザーの制服姿の貴也も一緒に家を出た。

「おー、貴也。すごい似合ってる」

 昂生が褒めた。

「はー、緊張する。同じクラスだといいな」
「僕と昂生は同じクラスだから。貴也も一緒だといいね」

 不安と期待でいっぱいだったが、本当に貴也が同じ高校に行くなんて。とにかく嬉しくて夕べはあまり眠れなかった。
 貴也を案内して職員室へ行くと、担任の先生から貴也は同じクラスだと告げられた。

「マジで最高なんだけど……」

 貴也は転校生なので、そのまま職員室から先生と一緒に行く事になり、翠たちは先に教室へ行った。
 教室に入り自分の席へ着く。翠は落ち着かず、昂生の席へ行った。

「昂生、僕、緊張しすぎてて」
「よかったな、翠」

 ポンと昂生が肩を叩いた。

「え?」
「貴也の愛の深さに俺は感動してるんだよ」
「昂生?」
「普通の奴は、好きな相手ができても学校を移ろうなんて思いつかない。貴也は翠に会った瞬間、ビビッときたんだよ、きっと」
「ビビっと?」
「俺はさ、翠に恋愛感情がなくてよかったってマジ思う。じゃなきゃこんなに長く一緒にいられないもん」

 珍しく昂生がよくしゃべるな、と思った。その時、ホームルームのチャイムが鳴り始めて、翠は急いで席についた。
 チャイムが鳴り終わる頃に、がらりと扉が開いた。担任の先生が入って来て、その後を翠と同じ制服で身を包んだ学生がゆっくりと入ってきた。
 翠はまるでスローモーションのように見入っていた。

「転校生を紹介する」

 先生の言葉にクラスのみんなが息を呑んで見守った。
 緊張で顔をこわばらせる貴也と目があった。
 貴也は翠を見ると、落ち着いた表情でこちらを見つめたまま言った。

「佐野貴也です。よろしくお願いします」

 クラスの女子が色めき立つ声と男子たちのそわそわする囁き声が聞こえた。

「佐野貴也くんだ。みんないろいろ教えてあげて欲しい。じゃあ、佐野くん、空いている席に座って」

 担任が紹介している間、貴也と翠はいつまでも見つめあっていた。

「佐野くん?」

 担任の声に貴也がハッとする。空いている席の横の生徒が手を振ってくれて、そちらへ向かい着席した。
 ざわざわする教室、翠は一瞬、ぼうっとしてから両手で頬を押さえた。
 これから何かが始まる予感がして、ゾクゾクした。




                          終わり