アイドルの君へ伝えたいことー配信アイドルの僕が、本物のアイドルに恋をした—

その時、僕の手首を誰かが掴んだ。

 そのまま引きずられて、テントの奥まで連れて行かれた。

「え?」

 僕は後ろを振り返ると、そこには英くんがいた。

「…なんで?」

 英くんはまだ仕事中なのに、こんなところに来ていいのか。

 僕のところまで来てくれて嬉しいが、アイドルの仕事を投げ出してほしくない。

「俺、あの時、好きって言ったの。悠生に向けてだから」

 素直な気持ちを英くんは口にする。

「あのさ、仕事は?」

 僕は英くんの気持ちを伝えてくれるのは嬉しい。

 でも、仕事のことが気になってしまう。

「大丈夫。今着替え中。俺は着替え終わったから少し時間できたから来た」

 英くんの服装を見ると、ジャージにスウェツトを着て、ラフな格好をしていた。

 英くんはにこりと口角を上げて、柔らかく包み込むように僕に言う。

「そ、そっか」

 ホッとして息を吐いてから、僕は返事をした。

「その時に悠生が好きって叫んでくれて、めっちゃくちゃ嬉しくて、その場を飛び出して
抱きしめたかった」

 英くんに抱きしめられた。

 僕の手は彼の背中にゆっくりと触った。

「…僕も…英くんのこと好きだよ。好き」

 英くんの胸の中で少し泣きながら、僕は今の精一杯の想いを伝えた。

「俺も好き!」 
    
 僕が返事をすると、英くんは間を置くことなく、好きと僕に言った。

 終始、英くんは口角を緩めていた。

 僕を強く抱きしめて、やった~と無邪気に笑っていた。

「あ、悠生の隣にいた女、誰?」

 零れ落ちるような笑みが真顔に変わってい
た。

 え? どうしたの?

 英くんの態度が変わり、僕は思わず後ろに後ずさりした。

 その動揺を英くんは感じたのか、僕の右手首を掴んで、まっすぐな瞳が僕の心から離れない。

「…ち、違うよ。誤解だよ。美月は僕の友達で、たまたまライブに来て、会ったんだ」

「美月?」

 英くんは眉をしかめて、機嫌悪そうに僕を見た。

「いや…美月とは友達だから!」

 僕が首を横に振り、いつもより声を大きめに言ったことで英くんは目を丸くしていた。

「…っ…分かった。分かったから、落ちついて。悠生、ゴメン責めて。信じるから」

 僕を慰めようと、僕の頭をポンポンと大切なものを扱うように優しく撫でる。