部屋、覗いちゃったんだ?

 中学二年生のお兄ちゃんが隣の家に住んでいた。僕は小学六年生だったからふたつ年上のお兄ちゃん。とても優しくて憧れている人。僕が一年生の時は手を繋いで毎日一緒に学校に行ってくれたし、誰にも言えない友達の悩みも真剣に聞いてくれて、励ましてくれたりもした。

 そんなお兄ちゃんは毎日カメラを持っていた。休日はいつも一緒にいて、景色や、僕も撮ってくれていた。



 しばらくお母さんとお父さんが仕事で家にいなくなることに。お兄ちゃんも今はひとりで暮らしていて、お互いに寂しいからと、お兄ちゃんの家に泊まることになった。
 お兄ちゃんの家は、一階のリビングにしか入ったことはない。なぜなら「二階に行ってはダメ。特に、絶対に僕の部屋を覗いてはダメだよ」と、強く言われていたから。
 二階にあるお兄ちゃんの部屋の隣の部屋で寝ることになったから、初めて二階に上がった。夜中トイレに行きたくて、隣で眠っているお兄ちゃんを起こさないように、そっと部屋を出る。
 ふと、好奇心が湧き、隣にあるお兄ちゃんの部屋を覗きたくなった。

――少しだけ、本当に少しだけだから。

 僕はダメだと言われていたのに部屋の中に入ってしまった。暗闇に目が慣れてくるとあるものが……。
 それらを見ると、ゾッとした。
「部屋、覗いちゃったんだ?」
 背後から聞こえた、いつもよりも低いお兄ちゃんの声に、全身が震えた。

 じりじりと近づいてくるお兄ちゃん。僕は距離を縮めたくなくて、怯えながら後ろにさがる。
「あ~あ、怖がらせちゃった?」
 怖いにきまっている。だって、いつ撮られたのか分からない写真も含めて、部屋一面にびっしりと貼られている僕の写真。他の人が隣に写っていたはずなのに、アプリで加工したのか、僕以外の人が綺麗に消えている写真もある。

 カメラで何かを写しているお兄ちゃんの姿が特に格好よくて憧れていて、お兄ちゃんのカメラに写ることが好きだった。なのに、なんでこんなことに?
「どうしてこんな写真が?」
「だって、ずっと見ていたかったから……さて、どうしよう。バレちゃったけど、これからも一緒にいてくれる?」

 僕は返事ができなくて、お兄ちゃんから目をそらしてしまった。
「無理かな? でも僕はずっと一緒にいたいな」
 そう言うとお兄ちゃんはガチャリと部屋の鍵をかけた。

 その日から僕は、行方不明の少年となった。