東宮殿の朝は、いつも静かで冷たい。
英蓮は目を覚ますと、すぐに胸の晒し布がきつく締め付けていることに気づいた。息を吸うたびに痛む。
それでも、世子として生きるためには、これを耐えなければならない。
「おはようございます」
荷允ではなく、低い無機質な声が響いた。
霧津だった。内人の装束を着たまま、寝所の入り口に立っている。表情は昨日と同じく、氷のように冷たい。感情の欠片も見えない。
「……霧津」
「当然だ。荷允は今は出ている。わたし以外に、誰が邸下の世話をするとでも?」
霧津は無造作に近づき、英蓮の体を起こした。まるで人形を扱うように、力加減は正確だが優しさはない。
「着替えをするから服を脱いで」
「自分で……できるから」
「できるわけがない。震えが止まっていない」
「出来る。だから、出て行ってくれ」
だけど霧津は英蓮の言葉を遮り、チョゴリの端を掴んだ。それに驚いて「やめろ!」と声を上げた。
「邸下、荷允です。失礼します」
扉が開き、 荷允が入ってくる。彼女は何があったか察して霧津を追い出すと、着替えを手伝う。
布を解く動作は、優しい。晒がなくなり解放されると、英蓮は思わず息を吐いた。痛みが引く安堵と、羞恥が同時に襲ってくる。



