偽装世子は冷遇されていたのになぜか影に溺愛されています。




 霧津は懐から文を取り出した。


 王室の隠し血筋を証明するものと、そして重臣たちの不正を記した証文の束だ。


「これを王の前に置く。
貴方たちが私を王にしようとした約束は、ここにある。
だが、私は王位などいらない。
私が望むのは――英蓮を中殿とすること。そして、貴方たちに跪かせることだ」


 だが、うまくいかず重臣の一人が叫んだ。


「ふざけるな! 内人風情が!」


 霧津の視線が、その男を射抜く。こんなの想定内だ。


「内人風情が、と言ったな。
ならば教えてやろう」


ムジンは静かに手を上げた。
すると、扉が開き、武装した兵たちがなだれ込んできた。
すべてムジンが地方の有力者たちから借り受けた私兵。
そして――王宮の禁軍の一部までもが、すでにムジンに寝返っていた。


「貴様らの不正は、すべて握っている。
賄賂、横領、反逆の密約……今ここで、公にするか?
 それとも、私の前に跪き、『世子妃殿下』と呼び、忠誠を誓うか」


 沈黙がこの空間を支配した、王の顔から血の気が引けていくのが見えた。


「……霧津、お前は……」

「私は父上から命じられた任務をこなしただけ」

 英蓮の手を強く握り、静かに続けた。
 するとわ兵の後ろからとある男が現れた。それは惜しまれつつ隠居の身となった太上王だった。


「ち、父上」


 太上王に皆が頭を下げるが「よいよい。そのまま」と言い止めるように言った。