偽装世子は冷遇されていたのになぜか影に溺愛されています。




 そんな英蓮の元に、避けられない儀式が訪れる。


「世子嬪を迎えよ」

「で、ですが陛下。わたくしは……」

「世子の事情は、話を通してある。相手も了承済みだ……入ってまいれ、荷允」


 選ばれたのは王家の遠縁で古い両班の末裔だが変わり者の集まりで地方の隠れた名家出身である才女、 荷允(ハユン)だった。

 彼女の家は王家と密約を交わし、世子の正体を知った上で娘を送り込んだ。

 婚礼の夜。東宮殿の寝所で、荷允が静かに微笑む。

「世子邸下お疲れではありませんか」

 英蓮は頷くことすらままならず、ただ震えていた。だが、荷允の後ろに控える大柄な内人の存在が異様に気になった。