偽装世子は冷遇されていたのになぜか影に溺愛されています。



 あれから数ヶ月が過ぎ、霧津の計画は着実に、しかし誰にも気づかれぬまま進行していた。

 霧津は重臣たちの弱みを握り、地方の有力者たちを買収し、王室の隠された血筋を証明する古文書を揃えた。
 そして、霧津の母方の出身地である異国の方を巻き込んでいる。

 すべては、夜の帳が下りるたびに、英蓮を抱きながら霧津が囁き続けた言葉通りになるように。そのために。


「あなたを『不要』だと言った者たちに、後悔を刻み込む」


 そして――ついにその夜が来た。
 玉座に重臣たちと王族の主要人物が集められた。
「緊急の御前会議」と称して。

 王は玉座に座り、疲れ切った顔で霧津を見下ろした。



「崔氏の妾の子よ。何用だ」


 霧津は一礼もせず、まっすぐに王を見据えた。
内人の装束を脱ぎ捨て、すでに霧津は王族の礼装を纏っている。


「王よ。殿下は翁女を『不要』と切り捨て、女の体で世子を務めさせ、使い潰そうとした」


 静寂が落ちる。知らなかったものは一緒ざわついた。


「その娘は、今ここにいる」


 霧津は手を差し伸べた。
帳の陰から、英蓮がゆっくりと姿を現した。
 胸の晒し布はもう必要ない。
柔らかなチマとトゥルマギを纏い、長く美しい黒髪を解いて。
完全に「女」として。