霧津の指が、英蓮の頰を撫でる。
「太上王は、幼少期から今の王が政に向いていないことに気づいていた。それと同時に、いつでも変われるように教育されていたのが俺だ。それに、あの人は英蓮のことも気にかけていたよ」
「え……? 太上王殿下が?」
「あぁ。実は、承恩尚宮さまのことも気にされていたんだよ。あの人は不器用なんだ。それに太上王がこの件を了承したことは強い。あなたを不要と言った王は、後悔するだろう。あなたを嘲笑った重臣たちは慌てるだろうな。ハハっ」
霧津は悪い笑顔を見せれば英蓮の目から、涙がこぼれた。
「ありがとうございます」
ムジンはヨンを強く抱きしめた。
「礼はいらん」
唇が、英蓮の額に落ちる。
「お前が冷遇された分だけ、俺が倍にして愛してやる。お前が放置された分だけ、俺が独占してやる。お前が不要と言われた分だけ――俺がお前を、この世で一番必要不可欠な存在にしてみせる」
その夜、霧津は英蓮を腕から離さなかった。
甘い言葉を、何度も何度も囁き続けた。
「お前は俺の妻になる。そして、俺のすべてになる」
その頃。一方では、宮廷では小さな噂が広がり始めていた。



