偽装世子は冷遇されていたのになぜか影に溺愛されています。




 英蓮は涙をこらえながら、霧津を見上げる。
 

「英蓮さま」


 声は低く、抑えきれない熱を帯びているようだ。


「あなたを守るためなら、俺はすべてを賭けると決めた。これは、あなたを守る俺の切り札だ」


霧津は懐から一通の書状を取り出した。それは、先代王との密約の写しだった。

  太上王(たいじょうおう)の名が記されていた。


 英蓮は心の中でどうして、太上王殿下の名があるのだろうと疑問に思った。


「王は、俺の提案を飲んだ」


 英蓮の目が見開かれる。陛下が誰かの意見を通したなんて……あり得るのであろうか。