偽装世子は冷遇されていたのになぜか影に溺愛されています。




 今宵は世子と世子嬢の合房(アッパン)――初夜の儀式。
 この夜、二人の営みが無事に果たされれば、世子の血統が続く証となる。

 だが、裏では嘲笑が渦巻いていた。


「どうせ子はできぬ。女の体ではな」



 東宮殿の寝殿。
 重い帳が幾重にも垂らされ、外には寝房内人(チムバンナイン)が控えている。外からは二人の影しか見えない。
 尚宮たちが厳しく監視する中、荷允は静かに英蓮に微笑んだ。


「英蓮様。覚悟はよろしいですか?」 


 荷允はそう言いながら霧津と着ている衣を変えた。そして向かい合うのは、霧津だ。


「……はい」


 英蓮は頷くことしか出来ない。

 霧津が立っていた場所に荷允が立つ。
 内人の装束を纏ったまま、その瞳はいつもより鋭く、それでいて熱がこもっていた。