偽装世子は冷遇されていたのになぜか影に溺愛されています。



「……なぜ」


 震える声で問いかける。霧津は少しだけ黙り静かに言った。


「……任務だからだ」


 その言葉に英蓮は少しだけ落ち込んだ。だが、霧津はその言葉のあと、小さく付け加える。


「……今は、な」


 英蓮は何も言えなかった。
 霧津は外衣を脱ぎ、英蓮の肩へかける。

 濡れた体が隠れた。


「その格好では、風邪を引いてしまう」


 低い声だった。だけど少し落ち着いてなかったのか、身体を丸める。


「邸下。これから二人の時は名で呼びたい。名を教えてくれないか?」

「私は、英蓮といいます」


そう言うと、お辞儀をした。


「英蓮さまか、綺麗な名だな」


 霧津はそれだけ言えばここを出て行った。残ったのは、ふわふわした気持ちと彼が肩に掛けた上着だけだった。