「もし斬るなら、今ここで」
すると、霧津の目が鋭く細められる。
「……なぜ、そう思う?」
「宮廷に、陛下に知られれば……もっと惨めに死ぬからです」
英蓮は小さく笑った。それしか出来なかったのだ。
「私の母は、承恩尚宮です。元は、平民でした。平民の中でも1番下の第一区生まれで飯屋で働いていたそうです。気立てがよくて美しいと評判が良かったそうで、ある日に当時は世子だった陛下がお忍びで来ていたらしく見そめられました。それで後宮にくることになったらしいです」
英蓮の言葉にしっかり聞いてくれている霧津に安心して話を続ける。
「ですが、陛下の寵を受けられたのはたった一度だけでした。その一度で私を身籠り、後ろ盾もないままに生まれたのが私です。ですが、中殿派は一度でも面白くなかったようで母は毒で身体が不自由になり今でも寝たきりです。そして、私は不要な翁主となりました」



