「……霧津」
「何だ」
霧津は無表情で近づき、英蓮を見た。
「さっきは、ありがとう」
「礼はいらん。ただ、俺の役目だっただけだ。気にするな」
霧津はそれだけ言うと、嬪宮媽媽を呼んでくるといい出て行った。その間に着替えを始めようと、チョゴリに手を掛けた。晒も外して、身体を温かいお湯に浸けた布で拭いていれは物音がして声をかける。
「荷允?」
だが、返答がない。だから体を大きな布で隠して扉を開ける。
「邸下、申し訳ありません……え?」
「……っ!? な、なんで」
咄嗟に布で隠したが、見られたのも同じだ。
「邸下は……男ではなく、女……?」
「す、すみません」
これはどう、説明すべきか英蓮は考える。
「貴方は女、ということですね? じゃあ……」
霧津は言葉を切った。
湯気の立ち込める部屋の中で、英蓮は布を胸元に押しつけたまま立ち尽くす。
逃げ場はない。
嘘も、もう意味がない。



