偽装世子は冷遇されていたのになぜか影に溺愛されています。




老臣は顔を赤らめ、声を荒げた。

「何を言うか! 庶民上がりの内人ごときが!」


 霧津はゆっくりと顔を上げ、老臣をまっすぐに見据えた。


「庶民上がりだからこそ、後ろ盾がないからこそ出来ることなのです。分かりますか?」


声は静かだが、底知れぬ冷たさがあった。


「嘲笑う暇があるなら、辺境の反乱を鎮める策を一つでも出せ……それとも、笑うことしか能がないのか」



 空気が凍りついた。重臣たちは言葉を失い、王族らの顔を青ざめさせた。
 霧津はそれ以上何も言わず、英蓮の後ろに下がった。まるで、何事もなかったかのように。


「大変失礼いたしました。ですが我が主である邸下に対し、無礼なお言葉に許せず……何せ、庶民上がりなものでして」

そんなことを言い、静まるとすぐに議は続いた。だがあれから誰もヨンを嘲笑う者はいなくなった。

 東宮に戻ると、英蓮は力尽きたように座り込んだ。