「お茶を差し替えます」
霧津の声は低く、抑揚がない。だが、重臣たちの笑いがぴたりと止まった。
老臣が眉を顰めるも、霧津は無言で茶碗を置き英蓮の前に跪いた。動作は丁寧だが、瞳は冷たい。
英蓮の手が、わずかに震えていることに気づいた瞬間――霧津の指が、茶碗の下で英蓮の指先をそっと覆った。
一瞬の、誰にも気づかれない接触。
だが、その冷たい指先は、ほんの少しだけ、温かみを帯びていた。英蓮は驚いて霧津を見上げる。
すると、霧津は表情を変えず立ち上がった。
「邸下のお体が優れないのは、宮廷の空気が悪いためだと思われますが……」



