宮廷の空気は、なぜだか日に日に重く淀んでいった。顯として公の場に姿を現すたび、重臣や異母兄弟たちの視線は、露骨に軽蔑と嘲りを帯びていた。
ある日の朝議。
英蓮は玉座の脇に控え、王の代わりに政を執る。声を低く抑え、毅然と振る舞おうとする。
「本日の議題は、辺境の反乱鎮圧についてでございます」
老臣の一人が、わざとらしく溜息をついた。
「世子邸下のご判断を仰ぎますが……やはり、お体が優れないようで。声も掠れておられますな。女のような細い声では、重臣の心も掴めぬでしょう」
周囲からくすくすと笑い声が漏れる。それに追撃するように若い家臣が言った。
「確かに。線が細すぎて、まるで冊封前の姫ようだ」
笑い声が大きくなった。
英蓮は拳を握りしめ、下唇を噛んだ。反論など、許されない。世子として、弱さを見せてはならない。
その時、影のように控えていた霧津が、静かに一歩進み出た。内人の装束のまま、しかしその存在感は圧倒的だった。



