その日、少女・李英蓮の運命は、文字通り“不要”という烙印と共に塗り替えられた。
国の光、国の希望であった世子が急逝した。王は慟哭し、宮廷は表向きの悲嘆に包まれた。
しかし裏では、誰もが冷ややかに囁き合っていた。
「たまたま、寵を受けた淑媛の娘が代わりになるなど、笑止千万」
「どうせ長くは持たぬ」
「王族に忌々しい平民の血が玉座に近づくなど、王家の恥だ」
暗い回廊を、英蓮は引きずられるように歩かされていた。
「今日よりお前は、李英蓮ではない。この国の世子、李 顯として生きろ」
王の声は氷のように冷たく、感情の欠片もなかった。ヨンの実の父でありながら、彼女を一度も優しく呼んだことのない男。側室の娘として生まれたヨンは、幼い頃から“不要な翁主”と蔑まれ、母と共に宮廷の隅で忘れ去られる存在だったはずだ。
だが、亡くなった世子と英蓮は瓜二つだった。それが、唯一の利用価値だった。



