御曹司は、なぜか私にだけ優しい

昼休み。

結菜は屋上のドアの前で立ち止まっていた。

(ドキドキする……)

神城に呼ばれてここに来た。

でも「まだ言ってないことある」と言われてから、ずっと気になっている。

深呼吸して、ドアを開けた。

屋上には神城がいた。

フェンスにもたれて、空を見ている。

風が少し強い。

神城は結菜に気づくと、小さく手を上げた。

「遅い」

「ご、ごめん」

結菜は神城のところへ歩いていく。

二人の間に少し沈黙が流れる。

結菜の心臓はずっとドキドキしている。

神城が言った。

「さっきの」

「え?」

「教室」

結菜は思い出す。

みんなの前で「付き合ってる」と言ったこと。

顔がまた赤くなる。

「びっくりした?」

神城が聞く。

「うん……」

正直に答えた。

神城は少し笑った。

「でも嘘じゃない」

その言葉に胸が温かくなる。

神城は真剣な顔になる。

「小林」

「なに?」

少し沈黙。

そして神城は言った。

「ちゃんと言ってなかった」

結菜は首をかしげる。

「何を?」

神城は結菜をまっすぐ見た。

その目は優しかった。

「俺」

少し照れたように言う。

「小林のこと」

そしてはっきり言った。

「大好き」

結菜の心臓が跳ねる。

「え……」

神城は続ける。

「最初に会ったときから」

「気づいたら気になってた」

「小林が笑うと安心する」

「小林が泣くと心配になる」

結菜の目に涙が浮かぶ。

神城は少し照れながら言った。

「たぶん」

「これが好きってことだと思う」

結菜は涙を拭きながら笑った。

「神城くん」

「ん?」

「私も」

勇気を出して言う。

「神城くんが好き」

神城は少し驚いた顔をしてから、やわらかく笑った。

そして言った。

「知ってた」

「え!?」

結菜が驚くと、神城は笑う。

「顔に出てる」

「もう!」

結菜は少し恥ずかしくなった。

でも心はとても温かかった。

神城は言った。

「これからさ」

「うん?」

「いろいろあると思う」

会社のこと。

家のこと。

簡単じゃない未来。

でも神城は続けた。

「それでも」

結菜の手を軽く握る。

「隣にいろ」

結菜はうなずいた。

「うん」

二人で空を見る。

青い空が広がっていた。

神城は少し笑う。

「やっぱり」

「なに?」

「小林にだけ優しくなる」

結菜は笑った。

「どうして?」

神城は答える。

「好きだから」

その言葉に、また胸がドキドキする。

結菜は思った。

最初は不思議だった。

どうしてこの人は、私にだけ優しいんだろうって。

でも今ならわかる。

それは――

恋だったから。

そしてこれからもきっと。

神城は、私にだけ優しい。