御曹司は、なぜか私にだけ優しい

次の日の朝。

学校に来ると、いつもよりざわざわしていた。

「見た?」
「昨日の噂!」

結菜は不思議に思う。

(何だろう…)

教室に入ると、みんなの視線が一斉に集まった。

「小林さん!」

クラスの女子が近づいてくる。

「神城くんと付き合ってるって本当!?」

結菜は固まった。

「え……?」

どうしてそんな話になっているのかわからない。

そのとき。

教室のドアが開いた。

神城だった。

いつもと同じ落ち着いた顔。

でも、教室の空気が一気に変わる。

男子たちがひそひそ話す。

「本当に付き合ってるの?」
「御曹司と!?」

結菜はどうしていいかわからなかった。

神城はゆっくり歩いてくる。

そして。

当たり前みたいに結菜の隣の席に座った。

クラスのざわめきがさらに大きくなる。

女子が思い切って聞いた。

「神城くん!」

「ん?」

「小林さんと付き合ってるの!?」

教室が静かになる。

みんなが神城の答えを待っている。

結菜の心臓がドキドキする。

(どうするの…?)

神城は少しだけ結菜を見た。

そして。

はっきり言った。

「そうだけど」

教室が爆発したみたいに騒ぎ出す。

「ええええ!?」
「マジで!?」

結菜の顔が一瞬で赤くなる。

「神城くん…!」

神城は平然としている。

「何」

「こんなところで言わなくても…!」

神城は少し笑う。

「別に隠す理由ない」

その言葉に、また胸がドキドキする。

そのとき。

教室のドアがもう一度開いた。

入ってきたのは――

西園寺莉子だった。

教室の空気がピリッとする。

莉子はゆっくり歩いてくる。

そして神城の前で止まった。

「蓮」

神城は冷静だった。

「何」

莉子は結菜を見る。

少しだけ寂しそうな顔だった。

「やっぱりこの子なんだ」

神城は答える。

「ああ」

莉子は少し笑った。

「負けたわね」

結菜はびっくりする。

莉子は続けた。

「でも」

少しだけ優しい声になる。

「蓮がそんな顔するの初めて見た」

神城は黙っている。

莉子は結菜に言った。

「大変よ」

「え?」

「蓮のそばにいるって」

でも最後に言った。

「でも」

「ちゃんと守ってくれる人よ」

そして振り向く。

「じゃあね」

莉子はそのまま教室を出ていった。

結菜はしばらく動けなかった。

神城は言う。

「気にするな」

「うん…」

少し沈黙。

そして神城が言った。

「小林」

「なに?」

「昼」

「?」

「屋上来い」

「え?」

神城は少しだけ笑う。

「まだ言ってないことある」

結菜の心臓がまた強く鳴った。