放課後。
教室にはまだ数人の生徒が残っていた。
結菜は一人でノートをまとめていた。
今日は神城が生徒会の用事でいない。
(先に帰ろうかな……)
そう思ったとき。
後ろから声がした。
「小林さん」
振り向くと、莉子だった。
「え?」
「少し話せる?」
結菜の胸が少しざわつく。
でも断る理由もなかった。
「うん……」
莉子は言った。
「階段のところでいい?」
校舎の階段。
夕方で人はほとんどいない。
窓からオレンジ色の光が入っている。
莉子は階段の上に立っていた。
結菜は少し下の段にいる。
「あなた」
莉子が言う。
「本当に蓮のこと好きなの?」
突然の質問だった。
結菜の心臓がドクンと鳴る。
「……」
答えられない。
でも沈黙が答えみたいだった。
莉子は小さく笑う。
「やっぱり」
そして少し近づいてくる。
「でもね」
声が冷たくなる。
「諦めた方がいい」
結菜はうつむいた。
「蓮は」
莉子は続ける。
「私と結婚するの」
「……」
「それが家の決まり」
結菜の胸がぎゅっと痛くなる。
そのとき。
莉子が言った。
「それでも好き?」
結菜はゆっくり顔を上げた。
そして小さく言う。
「……うん」
その瞬間。
莉子の目が変わった。
「そう」
そして。
結菜の肩を軽く押した。
一瞬だった。
足がバランスを崩す。
「きゃっ……!」
体が後ろに倒れる。
階段を――
落ちた。
ゴンッ
強い音が響く。
結菜は階段の途中で止まった。
腕が痛い。
頭も少しぶつけた。
(痛い……)
目の前が少しぼやける。
そのとき。
足音が聞こえた。
「……小林?」
低い声。
神城だった。
顔を上げると、神城が立っていた。
そしてすぐに階段を駆け下りる。
「大丈夫か!」
結菜のそばにしゃがむ。
「神城くん……」
神城は結菜の腕を見る。
赤くなっている。
その瞬間。
神城の表情が変わった。
ゆっくり立ち上がる。
そして階段の上を見る。
そこには莉子が立っていた。
「莉子」
声が低い。
今まで聞いたことがないくらい冷たい声だった。
莉子は言う。
「私じゃないわ」
でも神城は言った。
「触ったな」
空気が凍る。
莉子は少し黙る。
神城はさらに言った。
「小林に」
一歩、階段を上る。
「二度と」
もう一歩。
「触るな」
その目は、本気で怒っていた。
莉子は少し驚いた顔をする。
「蓮……」
神城は言った。
「もう婚約の話も関係ない」
教室では絶対見せない顔だった。
「次、小林に何かしたら」
静かな声で言う。
「俺が許さない」
莉子は何も言えなかった。
神城はそのまま結菜のところへ戻る。
そして優しく言った。
「立てるか?」
結菜はうなずく。
神城はそっと手を取った。
支えるように。
そして言った。
「帰る」
「え?」
「病院」
「大丈夫だよ」
結菜が言うと。
神城は少し怒った顔をする。
「大丈夫じゃない」
そして小さく言った。
「小林がケガするの」
「嫌だ」
その言葉に。
結菜の胸が強く鳴る。
神城は静かに言った。
「守るって言っただろ」
その手は、とても優しかった。
教室にはまだ数人の生徒が残っていた。
結菜は一人でノートをまとめていた。
今日は神城が生徒会の用事でいない。
(先に帰ろうかな……)
そう思ったとき。
後ろから声がした。
「小林さん」
振り向くと、莉子だった。
「え?」
「少し話せる?」
結菜の胸が少しざわつく。
でも断る理由もなかった。
「うん……」
莉子は言った。
「階段のところでいい?」
校舎の階段。
夕方で人はほとんどいない。
窓からオレンジ色の光が入っている。
莉子は階段の上に立っていた。
結菜は少し下の段にいる。
「あなた」
莉子が言う。
「本当に蓮のこと好きなの?」
突然の質問だった。
結菜の心臓がドクンと鳴る。
「……」
答えられない。
でも沈黙が答えみたいだった。
莉子は小さく笑う。
「やっぱり」
そして少し近づいてくる。
「でもね」
声が冷たくなる。
「諦めた方がいい」
結菜はうつむいた。
「蓮は」
莉子は続ける。
「私と結婚するの」
「……」
「それが家の決まり」
結菜の胸がぎゅっと痛くなる。
そのとき。
莉子が言った。
「それでも好き?」
結菜はゆっくり顔を上げた。
そして小さく言う。
「……うん」
その瞬間。
莉子の目が変わった。
「そう」
そして。
結菜の肩を軽く押した。
一瞬だった。
足がバランスを崩す。
「きゃっ……!」
体が後ろに倒れる。
階段を――
落ちた。
ゴンッ
強い音が響く。
結菜は階段の途中で止まった。
腕が痛い。
頭も少しぶつけた。
(痛い……)
目の前が少しぼやける。
そのとき。
足音が聞こえた。
「……小林?」
低い声。
神城だった。
顔を上げると、神城が立っていた。
そしてすぐに階段を駆け下りる。
「大丈夫か!」
結菜のそばにしゃがむ。
「神城くん……」
神城は結菜の腕を見る。
赤くなっている。
その瞬間。
神城の表情が変わった。
ゆっくり立ち上がる。
そして階段の上を見る。
そこには莉子が立っていた。
「莉子」
声が低い。
今まで聞いたことがないくらい冷たい声だった。
莉子は言う。
「私じゃないわ」
でも神城は言った。
「触ったな」
空気が凍る。
莉子は少し黙る。
神城はさらに言った。
「小林に」
一歩、階段を上る。
「二度と」
もう一歩。
「触るな」
その目は、本気で怒っていた。
莉子は少し驚いた顔をする。
「蓮……」
神城は言った。
「もう婚約の話も関係ない」
教室では絶対見せない顔だった。
「次、小林に何かしたら」
静かな声で言う。
「俺が許さない」
莉子は何も言えなかった。
神城はそのまま結菜のところへ戻る。
そして優しく言った。
「立てるか?」
結菜はうなずく。
神城はそっと手を取った。
支えるように。
そして言った。
「帰る」
「え?」
「病院」
「大丈夫だよ」
結菜が言うと。
神城は少し怒った顔をする。
「大丈夫じゃない」
そして小さく言った。
「小林がケガするの」
「嫌だ」
その言葉に。
結菜の胸が強く鳴る。
神城は静かに言った。
「守るって言っただろ」
その手は、とても優しかった。


