御曹司は、なぜか私にだけ優しい

転校してきてから。

西園寺莉子は、いつも神城の近くにいた。

昼休み。

「蓮、一緒に食べない?」

そう言って神城の机に来る。

でも神城は短く言う。

「行かない」

それだけ。

女子たちはびっくりしている。

婚約者なのに、態度が冷たいからだ。

結菜はその様子を、少し離れたところから見ていた。

(やっぱり世界が違う……)

神城は御曹司。

西園寺も、お嬢様。

自分とは違う。

そう思っていると。

「小林さん」

後ろから声がした。

振り向くと莉子だった。

「え?」

「ちょっといい?」

周りの女子たちが興味津々で見ている。

断れない空気だった。

結菜はうなずいた。

「う、うん」

莉子は言った。

「屋上に来て」

屋上。

風が少し強い。

結菜は緊張していた。

莉子はフェンスの近くに立っている。

そして振り向いた。

「あなた」

静かな声だった。

「蓮のこと好き?」

結菜の心臓がドクンと鳴る。

「え……」

答えられない。

莉子は少し笑った。

「わかりやすいわね」

そして近づいてくる。

「でも」

声が少し冷たくなる。

「やめた方がいい」

「……」

「蓮は普通の男の子じゃない」

結菜は下を向く。

わかっている。

そんなこと。

でも。

莉子は続けた。

「蓮の家は、日本でもトップクラスの企業よ」

「将来は社長」

「結婚相手も決まってる」

そして自分を指す。

「私」

結菜の胸が痛くなる。

莉子は言った。

「遊びならいいわ」

「でも」

目を細める。

「本気なら邪魔」

その言葉に、結菜の目が揺れた。

「私は……」

言葉が出ない。

そのとき。

足音がした。

「何してる」

低い声。

振り向くと、神城が立っていた。

結菜は驚く。

「神城くん……」

莉子はため息をついた。

「来たのね」

神城はまっすぐ歩いてくる。

そして結菜の前に立った。

「大丈夫か」

その言葉だけで、胸が熱くなる。

結菜は小さくうなずいた。

莉子は腕を組む。

「別にいじめてないわ」

神城は冷たい目で言う。

「屋上に呼ぶ必要ない」

「話したかっただけ」

「小林と?」

「ええ」

莉子ははっきり言う。

「あなたが大事にしてるみたいだから」

その言葉に、神城の表情が少し変わった。

そして言った。

「関係ない」

「あるわ」

莉子は言い返す。

「だって私」

少し笑う。

「婚約者だもの」

空気が張りつめる。

そのとき。

神城は結菜の手首を軽くつかんだ。

「行くぞ」

「え?」

そのまま屋上を出る。

廊下に出たあと。

神城は言った。

「ごめん」

「え?」

「巻き込んだ」

結菜は首を振る。

「違う」

そして小さく言う。

「私が勝手に……」

そこまで言ったとき。

神城が言った。

「違う」

結菜を見る。

「俺が近づいた」

静かな声だった。

「だから」

「……」

「守る」

結菜の心臓が強く鳴る。

(どうして……)

どうしてそこまでしてくれるの?

神城は少しだけ笑った。

「言っただろ」

「え?」

「星華は」

そして。

「俺の大事な人だ」

その言葉に。

結菜は初めて、はっきり思った。

(私……)

神城蓮のことが。

本当に好きだ。