御曹司は、なぜか私にだけ優しい

次の日の朝。

教室に入った瞬間、またざわついていることに気づいた。

「今日転校生来るらしいよ」
「しかも女子」

結菜は席に座りながら聞いていた。

(転校生……?)

ふと隣を見る。

神城はいつも通り窓の外を見ていた。

表情は変わらない。

そのとき、ホームルームのチャイムが鳴った。

先生が教室に入ってくる。

「今日は転校生を紹介する」

教室がざわめく。

先生がドアの方を見る。

「入っていいぞ」

ドアが開いた。

そして入ってきた人物を見た瞬間――

結菜の心臓が止まりそうになった。

「西園寺莉子です」

昨日、校門に来ていた女の子だった。

教室が一気に騒がしくなる。

「めっちゃ美人」
「モデルみたい」

でも結菜はそれどころじゃなかった。

莉子はゆっくり教室を見渡す。

そして。

神城を見て、少し微笑んだ。

「よろしくお願いします」

先生は黒板に名前を書いた。

「席は……」

教室を見回す。

そして言った。

「小林の後ろが空いてるな」

結菜の体が固まる。

「そこに座れ」

莉子はゆっくり歩いてくる。

ヒールの音が静かに響く。

結菜の後ろの席に座った。

そして小さく言った。

「また会ったわね」

結菜の背中がぞくっとする。

休み時間。

女子たちがすぐに集まった。

「西園寺さんってどこから来たの?」
「東京?」
「モデル?」

莉子は上品に笑いながら答える。

「東京よ」

そしてさらっと言った。

「蓮と同じ」

その言葉に女子たちがざわつく。

「え、神城くんと知り合いなの?」

莉子はあっさり言った。

「ええ」

そして。

「婚約者だから」

教室が爆発したみたいに騒がしくなる。

「えええ!?」
「マジで!?」

結菜の胸がぎゅっと痛くなる。

(やっぱり……)

莉子は神城を見る。

でも神城は無表情だった。

「蓮、久しぶり」

静かな声で言う。

神城は短く答えた。

「……ああ」

それだけ。

女子たちは興奮している。

「ドラマみたい!」
「すごい!」

でも。

莉子は突然、結菜を見た。

「小林さん」

「え?」

「昨日も言ったけど」

にっこり笑う。

でも目は笑っていない。

「蓮に近づきすぎない方がいいわ」

教室が一瞬静かになる。

結菜は言葉が出ない。

そのとき。

椅子が動く音がした。

神城だった。

ゆっくり立ち上がる。

そして言った。

「やめろ」

低い声。

莉子は少し驚く。

「蓮?」

神城は冷たい目で言った。

「小林に言うな」

「でも」

「俺が決める」

教室の空気が凍る。

神城は続けた。

「誰と話すか」

「誰といるか」

「全部」

そして結菜の方を見た。

「小林は関係ない」

莉子はしばらく神城を見ていた。

そして小さく笑った。

「そう」

でも。

その笑顔はどこか怖かった。

「じゃあ」

ゆっくり言う。

「本当に大事なのね」

神城は何も答えない。

でも。

その沈黙が、答えみたいだった。

結菜の胸が強く鳴る。

(どうして……)

どうしてそこまで守ってくれるの?

その理由を。

結菜はまだ知らない。

でも。

この日から。

結菜の学校生活は、大きく変わり始める。