御曹司は、なぜか私にだけ優しい

次の日の朝。

学校の前が、いつもより騒がしかった。

「なにあれ……」
「車すごくない?」

校門の前には、黒い高級車が止まっていた。

スーツ姿の男性が何人も立っている。

まるでテレビで見るような光景だった。

結菜は少し離れたところから見ていた。

(神城くんの関係かな……)

そう思ったとき。

車のドアが開いた。

中から降りてきたのは――

綺麗な女の子だった。

長い黒髪。

上品な制服。

そして、どこかお嬢様のような雰囲気。

周りの生徒がざわつく。

「誰?」
「モデルみたい」

その女の子は真っすぐ校門へ歩いてくる。

そして言った。

「神城蓮はいますか?」

その名前を聞いた瞬間。

周りの空気が変わった。

誰かが小声で言う。

「え、神城くんの知り合い?」

そのとき。

ちょうど校門から神城くんが出てきた。

女子たちがざわつく。

女の子は神城くんを見ると、少し笑った。

「蓮」

その呼び方に、周りがさらにざわめく。

神城くんは少しだけ驚いた顔をした。

「……莉子」

結菜の胸がドキンと鳴る。

女の子――莉子は言った。

「久しぶり」

そして、さらっと言う。

「婚約者が来たのに、そんな顔するの?」

その言葉を聞いた瞬間。

周りの生徒が一斉にざわついた。

「え!?」
「婚約者!?」

結菜の頭が真っ白になる。

(婚約者……?)

莉子は続けた。

「親同士が決めたでしょ」

「私たち」

「将来、結婚するって」

神城くんは黙っていた。

その空気が重い。

結菜はその場から離れようとした。

でも。

その瞬間。

莉子の視線が結菜に止まった。

「あなた」

結菜はびくっとする。

「神城くんのクラスメイト?」

「え、あ……」

答えようとしたとき。

莉子が言った。

「最近、蓮と仲いいって聞いたわ」

周りの視線が一気に集まる。

結菜の心臓が早くなる。

そのとき。

神城くんが一歩前に出た。

「やめろ」

低い声だった。

莉子は少し驚く。

「蓮?」

神城くんは結菜の前に立った。

まるで守るみたいに。

そして言った。

「小林に関係ない」

莉子は少し目を細めた。

「そう?」

「でも気になるわ」

そして。

結菜を見ながら言う。

「あなた、蓮の何?」

結菜は言葉が出ない。

そのとき。

神城くんが言った。

「俺の」

教室中が静まり返る。

そして。

神城くんは続けた。

「大事な人だ」

結菜の心臓が止まりそうになった。

「え……」

顔が一気に熱くなる。

周りの生徒たちも驚いている。

莉子も少しだけ目を見開いた。

神城くんはさらに言った。

「だから」

冷たい目で莉子を見る。

「小林に何か言うなら、俺に言え」

その姿は、まるで本当に守っているみたいだった。

結菜の胸が強く鳴る。

(どうして……)

どうしてこんなに優しいの?

どうしてこんなに守ってくれるの?

その答えを。

結菜はまだ知らなかった。