ルミナス ― 境界の均衡者

◼️地下フロア。

赤色灯が点滅する。

警報音が鳴り響く。

拘束された被験体。
割れたガラス。
薬品の匂い。

望が倒れた警備員を踏み越える。

その瞬間。

奥の扉が開く。

武装警備員が三人。

実弾拳銃。

「動くな!」

発砲。

乾いた銃声が地下に反響する。

望が横に滑る。

弾丸が壁を穿つ。

和春が即座に愛華を背後へ引く。

自然な動き。

迷いがない。

身体で庇う。

視線は敵。

緑の瞳が冷静に状況を測る。

望が腰のホルスターから拳銃を抜く。

ノクスではない。

現実の銃。

裏の仕事用。

一発。

眉間。

二発目。

喉。

三発目。

肩口から心臓。

三人が崩れる。

無駄がない。

躊躇もない。

血の匂いが広がる。

和春は一瞬だけ目を細める。

だが動じない。

愛華が小さく言う。

「……容赦がないですね」

望は答えない。

足音。

さらに二人。

望が撃つ。

一人即死。

もう一人が逃げようとする。

「待て」

一発。

背中。

沈黙。

地下に静寂が戻る。

和春が低く言う。

「ここはそういう場所か」

望が視線を向ける。

「裏だ」

短い言葉。

「優しさは命を落とす」

和春は頷く。

「合理的だな‥」

だが次の瞬間。

望が銃口を向ける。

和春の額へ。

地下の冷たい空気が止まる。

愛華が一歩前に出ようとする。

和春が手で制す。

動くな、という合図。

望の水色の瞳は冷たい。

「お前は掴みすぎた」

淡々。

「消す必要がある」

銃口は動かない。

引き金に指。

和春は瞬きをしない。

緑の瞳が、望を観察する。

呼吸。

肩の力。

視線の固定。

引き金にかかる圧。

数秒。

和春が言う。

「撃つつもりはない」

地下が静まる。

望の指は動かない。

和春は続ける。

「脅している呼吸だ」

愛華がわずかに目を見開く。

「銃口は安定している。でも視線が固定されすぎている」

望は無言。

「本気で撃つ人間は、もっと静かだ」

和春の声は穏やかだ。

威圧がない。

「言葉も多い」

沈黙。

「撃つつもりなら、今はもう話していない」

地下の警報が鳴り続ける。

数秒。

望が銃を下げる。

「……面倒だな」

和春がわずかに笑う。

「よく言われる」

愛華が安堵の息を吐く。

望は言う。

「お前、何者だ」

「コンサルだ」

即答。

「帳簿が嘘をつくと気分が悪い」

血の匂いの中。

三人の視線が交差する。

裏の世界。

撃つ時は撃つ。

だが今は撃たなかった。

望の中で、判断が変わった。

混ざり者。

しかも、有能。

地下の奥でさらに扉が開く音がする。

望が言う。

「生きて出るぞ」

和春が頷く。

「合理的だ」