先生、それって飼育委員じゃなきゃダメなんですか?


「一緒に寄って欲しい所ってここ?」


僕と数多は今、神社の前に立っている。

「はいそうです。明日の歓迎会が上手くいく様にお参りしようと思って。
僕は何かあるとよくここにお参りに来るんです」

「へー、そうなんだー」

こんなに完璧な人間でも神様にお願い事なんてするんだ。

カランカラン

賽銭箱に小銭を入れて2人で並んでお参りをする。
横に並ぶ数多の顔をチラッと覗き見してみた。

『わぁ、まつ毛が長い』

数多は明日の新入生歓迎会の成功を祈っているのは分かっている。

僕も何か

神様にお願いするんだからな

いい加減なお願いは出来ないや。
それでもやっぱり数多の顔が浮かんでしまう。



神社を出てから『服は何処で買うの?どんな音楽をよく聞く?』なんてたわいも無い話をしながら歩いた。
同じクラスと言っても同じ空間で勉強しているだけ。
お互いの事なんてほとんど知らない。

真っ直ぐに続く道を暫く話しをしながら歩いた。
次の角を曲がった時、オレンジ色の夕陽がいきなり僕達の目に飛び込んできた。

「わあ、夕焼けが綺麗ですね」

「本当だぁ!夕焼けってこんなにオレンジ色だったっけ?
あっ下の方には赤色もある。西の空ってこんなんだったんだ。
今まで気にした事なんてなかったかも、、マジで綺麗だね」

男子高校生でも自然の偉大さには感動するものだ。

僕は美しい夕焼けに思わず見とれてしまった。
数多が僕の方をじっと見つめているなんて気付かない。

「日向…」

「ん?なに?」

声のする方に振り返る。

「日向の顔も夕焼けに照らされてなんだかノスタルジックですよ。髪の毛もオレンジ色にキラキラ輝いて。何か付けてますか?」

ノスタルジック?
何それ?

数多の手が僕の髪に軽く触れた。


「いや、そっ…そうかなぁ…
数多だってオレンジ色に光ってるし」


思わず横を向いてしまった。

「日向、僕は本当の事を言ってるんです」

そんなに見つめないで欲しい。僕に恋の免疫なんて無いんだから!

「えっと、なんか夕方ってさ…陽が落ちるの早くない?すぐ暗くなるって言うかさ。そんな事も無いのか…な?あっ、アレだよ。ほら夕焼けが綺麗なぶん切ないって言うか」

その時ふっと肩に何かが掛けられたのに気付いた。

「夕焼けの後は少し寒くなりますからこれを来て帰って下さい。風邪でも引いたら大変です」

数多が羽織っていたカーディガンを僕の肩にかけてくれた。

「でも、数多は寒くないの?」

「僕の家は割とここから近いので大丈夫です。
今日は付き合ってくれて有り難うございました。ではまた明日」

あっ、そうか、ここで別れるのか…。


数多の背中ってあんな感じだったんだ


「また明日な」

こっちをクルッと振り返って
聞こえるか聞こえないか小さく手をふって僕に笑いかけた。


僕も小さく手を振り返すのがやっとだった。

僕は数多が肩にかけてくれたカーディガンに袖を通してみた。さっきまで着ていた数多の温もりがまだ残っている。
ふんわりいい匂いがして、袖を鼻に押し当ててみた。
数多の匂いがする。

なんか卑怯だよなぁ〜。こーいうの