先生、それって飼育委員じゃなきゃダメなんですか?



「毎年恒例の新入生歓迎会の流れは、学校のあゆみを映像で振り返る上映会をして、その後にちょっとしたステージ発表をします」

数多が今迄の歓迎会の流れをざっくり説明してくれた。


「でも歓迎会ってつまんないんだよね。結局いつも通りにやるのが無難って事なんでしょ…。」


「そうだよなぁ、ステージ発表とか見て誰が喜ぶんだよ。時間の無駄じゃない?案外瑞穂が主役なら喜ぶのかもな」



「考えるの面倒だなぁ〜」
いつもは正義感の強い里見なのに考えるのを早々にやめてしまいそう…。

「いや、折角このメンバーでやるんだし、これも一生の記念になるので、ちょっと面白い事をしてみたくないですか?
何かいい案はありませんか?」
数多にしては攻めた事言うんだなぁ…意外かも


「案ねえ…」
里見が上の方に視線を向けながら考え込んでいる。

「じゃあさぁ例えばだけど、休み時間や委員会の活動の様子をビデオで撮って流すっていうのはどうかな?
どの委員に入ろうか悩んでいる1年生には役に立つんじゃないかなぁ」

「えっ、それいいじゃん」

「確かにそれ有りだよ。百聞は一見にしかずって言うし」
皆んな賛成してくれるんだ

「あと、ちょっとしたプレゼントを渡すとかは?
例えばだけどクッキーを焼いて渡すとか…」

「クッキー?日向クッキーなんて焼くの?」
東が意外そうな顔をして僕の方を見ている。

「いやいや、例えばの話だよ」

「でもそれいいよね。プレゼントって嬉しいかも」


「いい案だとは思いますが、衛生面を考えても少し難しいかもしれないですね」

「じゃあ、クッキーの代わりに、消しゴムとかは?」

「消しゴム?小学生かよ」

東はスンと拗ねて迷子の子犬みたいな顔をしている。僕が女の子だったら抱き上げてたかも…


「じゃぁさぁ、駄菓子とかは?
大袋に入った飴玉とかを買えば安上がりだしさ」
前になんかでもらった事あったんだよな。

「おっ、それいいね、やっぱりお菓子が1番だよ」

「僕もそれいいと思うな」


「でも許可は降りるのかなあ?」
心配になって数多の方をチラッと見た。

「飴玉か…大袋に入った…。それなら全校生徒にも配れそうですね。
お弁当の後のいいおやつになりそうだし。
ビデオ撮影とお菓子の件は明日先生に聞いてみます。」

「えっ、きまり…聞いてくれるの?宜しくお願いします」
4人が同じタイミングで数多に頭を下げていた。


数多ってすごいなぁ。

数多が一緒に参加してくれて本当に良かった。

でもいくら先生の頼みとはいえよくオッケーしてくれたよな…生徒会の仕事とかもあるのに。

疲れないのかな?




ー 1週間後 ー


飼育委員メンバーと数多が教室で何やらコソコソと話をしている。

「何、なんの話?なんか進展あった?」
気になって聞いてみた。

「あっ日向、先生から予算がおりましたよ。ビデオ撮影もオッケーが出ました」
数多の報告に妙に安心する僕。

「良かった〜これで進められるね」

「って言うか、ビデオっていつ撮っていいわけ?」

「休み時間の様子を撮ってたら俺たちの休み時間って終わっちゃわない?」

「お菓子って何処で買うべき?やっぱお菓子の問屋とか…」
どれが誰の質問なのか分からない。

「話が長くなりそうなので飼育室に集まりませんか?」
ナイス、数多!それが絶対にいいと僕も思った。



「先生からの注意事項ですが、ビデオ撮影をしてもいいですが、学校以外では絶対に流さない。
撮影する時はこのスマホを使う様にとこちらを預かってきました。

あとお菓子の予算は結構多めに出そうです。
飼育委員に悪いね。と担任が掛け合ってくれたみたいですよ」

数多の説明は分かりやすい。やっぱり救世主なのかもしれない。

「では明日から撮影の方宜しくお願いします。
スマホは一台しかありませんから、効率よくやっていきましょう。
日向と瑞穂が休み時間の様子を撮って、里見と東が委員会活動を撮るというのはどうですか?」


ほぉ〜〜っ、流石!抜かりない。
僕達の周りに絶対にいなかったタイプだ。
気づけば4人とも数多の話を夢中で聞いている。
熱い眼差しを送る男子高校生4人は側から見たらきっと気持ち悪かったと思う。



「ちょっと、日向、瑞穂、数多、見てくれよぉ〜。コレ!
マジで笑えるって!もう腹痛いっっ」
何か面白い物を見つけてしまったみたいだ。

「何?なに?どーした」
僕は気になって訪ねた。

「コレだよ、コレ!」

東がスマホを差し出して今、撮影してきたであろう動画を再生した。
そこには同じクラスの髙木が写っていた。
彼は撮影しているのに気づくと軽くステップを踏みながらこっちに寄って来た。
人差し指までこちらに向けての満面の笑顔に思わず吹き出してしまった。
しかし彼の勇姿はここで半ば強引に終わりを告げる。

担任に見つかり半分歯がいじめにされながら髙木はひきづって行かれたから。
あまりの名残惜しそうな顔に全員が大笑いだった。

「何コレ!マジで最高〜。絶対使おうよ」

全員一致の賛成。
あの数多が大口開けて笑ってる…
今までどこか壁があった5人の距離がぐんと縮まっていく気がした。
こういうのなんか楽しいね。