季節は夏から冬に変わっていた。
ついこの間、暑いと言って数多と一緒にフラペチーノを飲んだのがずっと遠くに感じる。
いつもの放課後、僕は可愛い生き物たちの世話をするため、教室を出て廊下を歩いていた。
その時、僕の背中をツンツンと押す誰かの手に気付いて後ろを振り向いた。
そこには、隣のクラスの女子が2人立っていた。
1人は確かこの前僕を2年生の女子から救ってくれた川瀬さん……??
もう1人は多分鈴木さんかな?
「日向君ごめん。どうしても聞きたいことがあって…ちょっと時間あるかな」
2人は僕の返事も聞かずに廊下の隅まで僕を引っ張っていった。
「なっ…何?どうしたの?」
2人は決心したようにお互いに顔を見合いながら、僕の方に向き直り
「実は………
瑞穂くんって彼女いるのかなぁ?って思って」
彼女…??瑞穂に?
川瀬さんの予想だにしない質問にちょっと驚いた。
「さぁ、多分いないと思うけど」
彼女達は目をキラキラ輝かせてなにやら安心しているみたいに見えた。
「本当?よかったぁ〜じゃあ、里見君や東くんは?」
「多分いない……と思う」
もし僕の知らない間に彼女が出来ていたとしたらそこは申し訳なく思うけど。
出来ていたら多分すぐにメールで連絡をくれるはず
「ごめんね。変なこと聞いて。
なぜか、飼育委員に我が校のイケメン4人が集まっちゃったから。
本人達に聞くのも恥ずかしいし…
かと言って他に飼育委員に入ってる子もいないから誰にも聞くこと出来なくて。
今ちょうど日向くんが1人で歩いてるのが見えたから、このチャンすを逃したらダメだと思って」
そうか僕には聞けるんだ……
「でも全員がフリーなんて信じられない!良かったぁぁー!」
彼女がいないと言うだけで、そんなに安心出来るものなんだ。
確かに鈴木さんも川瀬さんも満面の笑顔をしている。彼女達の話はまだまだ終わらない。
「今日でもう12月に入ったでしょう。もう少ししたらクリスマス!!
みんなクリスマスはかっこいい彼氏とケーキ食べながらプレゼント交換したりしたいじゃない〜。
だから、みんな瑞穂君、里見君、日向君、東君に彼女がいるのかどうか気になってるの」
「はぁー」
あっ、でも僕の名前も入ってる。
僕だけ入ってないから聞いて来たのかと思ったから、少し安心してしまった。
「でもね、ダントツ人気1位は数多くんなんだよ」
なんだって?ダントツ1位?
一部の女子からじゃなくて?
「生徒会長で頼りがいがあって、切れ長の目にサラサラな黒髪〜〜〜憧れるぅ」
2人は両手を握り締め天を仰いでいる。
「でもこの事は誰にも言わないでね。絶対よ!私達から聞いたなんてもってのほかだから!」
僕、言うなんて言ったっけ?
「後、これは私達からの提案なんだけどお〜
私達、日向くんを守る会を作ろうと思うの。日向くん承認してくれる?」
あまりの話の変化に脳がついていけない…僕は一旦停止した脳をフル回転させた。
「ちょっと待って……何…僕を守るってどういう意味?」
「だって日向くんこの前2年生の女子に絡まれそうになってたでしょう。案外日向くんの事いいなって思ってる子多いんだよ。
だから私達で日向君を守ろうっていうか……。多分メンバーは増えると思うけどぉ。
この前みたいな有力情報をキャッチしたらすぐに知らせに行くっていうか〜〜。日向くんの承認をもらえれば、私達すぐお知らせにあがります」
いや、いやいや、話が飛躍しすぎだろう。
それにこの前数多に自分の事は自分で守って欲しいって言われたばかりなのに……女子に守られるとかって有りなの?
「いやぁぁ、気持ちはうれしいんだけど、それはちょっと……。女の子に守られるのも」
頭の中で整理がつかないから言葉がちぐはぐになっている。どうやってまとめたらいいのかなぁ。
「残念だなぁ」
「でも数多君にファンクラブがあるの知ってる?」
なぬ??
それは聞き捨てならない
「ファンクラブってなに?学校の女子が作ってるの?」
僕の問いかけに彼女たちの勢いは止まらず、ますます話をまくし立てる。
「ファンクラブって言うかぁ〜まず、
数多のくんの瞳を守る会でしょう
瑞穂くんの視界に入りたい会
里見くんの平和を守る会
日向くんの笑顔を守る会
東くんのペットになりたい会
日向くんはイケメンなのにちょっと自信なさげなところが可愛いっていうか、守ってあげたいって思うタイプ
だから、守ってあげたい会を新たに発足しようと思って」
僕って見透かされてる?って言うか、本人を目の前にして言うんだ。
女子高校生の発想力は、僕の想像を遥かに上回っている。
「そうなんだ…」
コレが今の僕の精一杯の言葉。
「「とにかく、クリスマスまでに告白しようとする女子が多いはずだから 。
私たちは全校女子の平和と規律を守るため、ファンクラブを作っているんです。抜け駆けは許しません」
とは言っても、恋愛は自由だし、みんな彼女になりたいと思ってるのは事実なんだけどね」」
本音はそこな訳だ。
「でも、私達からしたら、みんな本当に雲の上の人っていうか…恐れ多くて恋心なんて抱けません。
彼女がいないって分かって、ほんと安心した。出来たら作って欲しくないんだけど」
雲の上の人って…ただの一般人だけど。
突っ込んだとしても受け入れて貰えないだろう。
「時間取らせちゃってごめんね。これからどこ行くんだっけ?」
「飼育室に…」
「そっかぁ〜じゃあね、ありがとう」
知りたかった情報を得られて満足したのか、2人は僕の前から去っていった。
なんだか疲れた。無性に疲れた。たくさんの情報が一気に頭に入ってきて思考回路が混線したみたいな気分。
とりあえずこの場から早く立ち去ろう。
飼育室に着くと、意外な事に里見と瑞穂が座っていた。
「あれ?今日は早いじゃん」
「うーん、なんだか最近取り巻きが多いっていうか、視線を感じるんだよね」
さすが瑞穂! 根っからのアイドル気質は気づきが早い。
「でもさぁ、僕達のクラスの女子って真面目っていうか意外とそっけないよね。
でも、他のクラスの女子の見る目が何か違う気がするんだよね」
「そうだよなぁ、俺も気になってた」
里見もなの??
「とは言っても、僕は他校の女子にも見つめられているから…」
僕は瑞穂みたいに前向きに考える性格の人間が本当に羨ましい。
「12月に入って後3週間後にはクリスマスだから、皆んな彼女彼氏が欲しいのかも」
なんとなく匂わせてみる。
「あーーーっ、そう言う事ね!!」
瑞穂、そっちには鈍感なんだ。
「でもさ、ケーキ準備してプレゼントも準備してオマケに何処にデートに行くかも考えなきゃなんでしょう…
僕、面倒くさくて嫌かもなぁ」
与える方じゃなくて与えられる方なら良いのか?
聞きたい所をグッと我慢…。
「そうかなあ?俺は案外驚かせたいタイプかも。
喜んだ顔見れたら嬉しくない?」
僕は里見に一票だな。
与える事に喜びを感じる女子なら瑞穂がいいのか…?
ガチャと部屋の扉が開いて東が入ってきた。
「お待たせ〜。なんかさっき一年の女子から家庭科でクッキー焼いたからぁってコレ貰った」
手作りクッキーの思惑なんて何も感じていない東が清々しい笑顔でクッキーを見せてきた。
すでに女子達の「イケメンの彼女になる戦いは」は始まっていたようだ。
クリスマスも近い冬になると一気に受験シーズン感が強くなる。
僕達は高校大学一貫校に通ってはいるけど、一応高校3年生。
勉強しなくてもいいと言う訳ではない
落第する可能性も、無きにしもあらず。
不安な要素は、取り除いておきたい
僕と数多は放課後にカフェで勉強することが多くなった。
なんとなくだけど、家で勉強するよりカフェで勉強した方がはかどる気がする。
聞けば教えてくれる数多がいるのも大きい。
僕達はなるべく他のお客さんの迷惑にならない様、極力小さな声か筆談で会話をする事が多くなった。
今日は少し勉強している学生が多い気がする。
1番奥のテーブルが、僕達のいつもの席。
僕は苦手な数学の問題に悪戦苦闘中
数多は鞄からイヤホンを取り出して、両耳につけた。
何を聞いているんだろう…英語のヒアリングかなぁ?
僕はノートに[何を聞いてるの?]
と書いて数多の前に差し出した。
数多はそれを読むと、何も言わずに自分の右耳のイヤホンを外して、僕の左耳にそれをさした。
リズミカルな音楽が流れている。
勉強じゃなくて音楽を聴いてたんだ。
この曲を聴くとテンションが上がるのかな?
なんて思いながらしばらく音楽を聴いていた。
あれっ?これってクリスマスソング?
僕はまたノートに
[これってクリスマスソングだよね?]
と書いて数多に見せた。
小さくコクリと頷く。
[24日は一緒にクリスマスケーキを食べよう]
僕のメモの下に数多が書き足す。
笑顔が止まらない。見られると恥ずかしいから、思わず下を向いてしまった。
[もちろんだよ]と書き足してたけどね。
ワイヤレスじゃ無くてイヤホンとかってグッと距離が近く感じるの僕だけかな?
でも、僕のクリスマスの戦いは、これからだった。
なぜなら数多の周りが騒がしい…
同じクラス故、知りたくないことまで知ってしまう。
違うクラスの女子なのに、いきなり教室に入ってきて
「数多君、金魚のキーホルダー、カバンにつけてるよね?
金魚が好きなのかなぁと思って、可愛い金魚のグッズがあったから買ってきたんだ。これあげる」
と、プレゼントを差し出したり
数多とすれ違い様に下級生女子が、
「センパーイ」
って呼んで手を振ってみたり、なんだか知らないけど、体育館裏に呼び出されたり。
クリスマスって1年に1度の大大大イベントだったんだ。
今までは恋愛対象だと思っていた女子が焼きもちの対象になるなんて全くもって青天の霹靂。
申し訳ないが数多は僕の彼氏。
渡す訳にはいかない。
とは言っても、僕には何をする術も無くただ平静を装う事しか出来なかった。
「どうしたの?最近元気ないね」
「そうかなぁ」
「何か気になることでもあるの?」
「いやー気になるっていうか…数多ってモテるなぁって思って」
「もしかしてそこ気にしてたの?」
「うん」
「だから日向はもっと自分に自信を持っていいんだって!俺の言った事忘れた?俺が好きだって思った人とじゃなきゃ付き合いたく無いって言っただろ」
数多に言われると、少し自分に自信が持てる気がする。
「数多はどうして僕の事を好きになってくれたの
新入生歓迎会がきっかけとか?」
「もっと前から」
もっと前…??
驚いて数多の方に顔を向ける。
左の口角を少し上げクスッっと数多が笑った。
数多は意地悪な事を考えている時、いつもこの顔をする。この顔を知っているのは僕だけだと思うけど、
僕達にそんな接点あったかな??
ついこの間、暑いと言って数多と一緒にフラペチーノを飲んだのがずっと遠くに感じる。
いつもの放課後、僕は可愛い生き物たちの世話をするため、教室を出て廊下を歩いていた。
その時、僕の背中をツンツンと押す誰かの手に気付いて後ろを振り向いた。
そこには、隣のクラスの女子が2人立っていた。
1人は確かこの前僕を2年生の女子から救ってくれた川瀬さん……??
もう1人は多分鈴木さんかな?
「日向君ごめん。どうしても聞きたいことがあって…ちょっと時間あるかな」
2人は僕の返事も聞かずに廊下の隅まで僕を引っ張っていった。
「なっ…何?どうしたの?」
2人は決心したようにお互いに顔を見合いながら、僕の方に向き直り
「実は………
瑞穂くんって彼女いるのかなぁ?って思って」
彼女…??瑞穂に?
川瀬さんの予想だにしない質問にちょっと驚いた。
「さぁ、多分いないと思うけど」
彼女達は目をキラキラ輝かせてなにやら安心しているみたいに見えた。
「本当?よかったぁ〜じゃあ、里見君や東くんは?」
「多分いない……と思う」
もし僕の知らない間に彼女が出来ていたとしたらそこは申し訳なく思うけど。
出来ていたら多分すぐにメールで連絡をくれるはず
「ごめんね。変なこと聞いて。
なぜか、飼育委員に我が校のイケメン4人が集まっちゃったから。
本人達に聞くのも恥ずかしいし…
かと言って他に飼育委員に入ってる子もいないから誰にも聞くこと出来なくて。
今ちょうど日向くんが1人で歩いてるのが見えたから、このチャンすを逃したらダメだと思って」
そうか僕には聞けるんだ……
「でも全員がフリーなんて信じられない!良かったぁぁー!」
彼女がいないと言うだけで、そんなに安心出来るものなんだ。
確かに鈴木さんも川瀬さんも満面の笑顔をしている。彼女達の話はまだまだ終わらない。
「今日でもう12月に入ったでしょう。もう少ししたらクリスマス!!
みんなクリスマスはかっこいい彼氏とケーキ食べながらプレゼント交換したりしたいじゃない〜。
だから、みんな瑞穂君、里見君、日向君、東君に彼女がいるのかどうか気になってるの」
「はぁー」
あっ、でも僕の名前も入ってる。
僕だけ入ってないから聞いて来たのかと思ったから、少し安心してしまった。
「でもね、ダントツ人気1位は数多くんなんだよ」
なんだって?ダントツ1位?
一部の女子からじゃなくて?
「生徒会長で頼りがいがあって、切れ長の目にサラサラな黒髪〜〜〜憧れるぅ」
2人は両手を握り締め天を仰いでいる。
「でもこの事は誰にも言わないでね。絶対よ!私達から聞いたなんてもってのほかだから!」
僕、言うなんて言ったっけ?
「後、これは私達からの提案なんだけどお〜
私達、日向くんを守る会を作ろうと思うの。日向くん承認してくれる?」
あまりの話の変化に脳がついていけない…僕は一旦停止した脳をフル回転させた。
「ちょっと待って……何…僕を守るってどういう意味?」
「だって日向くんこの前2年生の女子に絡まれそうになってたでしょう。案外日向くんの事いいなって思ってる子多いんだよ。
だから私達で日向君を守ろうっていうか……。多分メンバーは増えると思うけどぉ。
この前みたいな有力情報をキャッチしたらすぐに知らせに行くっていうか〜〜。日向くんの承認をもらえれば、私達すぐお知らせにあがります」
いや、いやいや、話が飛躍しすぎだろう。
それにこの前数多に自分の事は自分で守って欲しいって言われたばかりなのに……女子に守られるとかって有りなの?
「いやぁぁ、気持ちはうれしいんだけど、それはちょっと……。女の子に守られるのも」
頭の中で整理がつかないから言葉がちぐはぐになっている。どうやってまとめたらいいのかなぁ。
「残念だなぁ」
「でも数多君にファンクラブがあるの知ってる?」
なぬ??
それは聞き捨てならない
「ファンクラブってなに?学校の女子が作ってるの?」
僕の問いかけに彼女たちの勢いは止まらず、ますます話をまくし立てる。
「ファンクラブって言うかぁ〜まず、
数多のくんの瞳を守る会でしょう
瑞穂くんの視界に入りたい会
里見くんの平和を守る会
日向くんの笑顔を守る会
東くんのペットになりたい会
日向くんはイケメンなのにちょっと自信なさげなところが可愛いっていうか、守ってあげたいって思うタイプ
だから、守ってあげたい会を新たに発足しようと思って」
僕って見透かされてる?って言うか、本人を目の前にして言うんだ。
女子高校生の発想力は、僕の想像を遥かに上回っている。
「そうなんだ…」
コレが今の僕の精一杯の言葉。
「「とにかく、クリスマスまでに告白しようとする女子が多いはずだから 。
私たちは全校女子の平和と規律を守るため、ファンクラブを作っているんです。抜け駆けは許しません」
とは言っても、恋愛は自由だし、みんな彼女になりたいと思ってるのは事実なんだけどね」」
本音はそこな訳だ。
「でも、私達からしたら、みんな本当に雲の上の人っていうか…恐れ多くて恋心なんて抱けません。
彼女がいないって分かって、ほんと安心した。出来たら作って欲しくないんだけど」
雲の上の人って…ただの一般人だけど。
突っ込んだとしても受け入れて貰えないだろう。
「時間取らせちゃってごめんね。これからどこ行くんだっけ?」
「飼育室に…」
「そっかぁ〜じゃあね、ありがとう」
知りたかった情報を得られて満足したのか、2人は僕の前から去っていった。
なんだか疲れた。無性に疲れた。たくさんの情報が一気に頭に入ってきて思考回路が混線したみたいな気分。
とりあえずこの場から早く立ち去ろう。
飼育室に着くと、意外な事に里見と瑞穂が座っていた。
「あれ?今日は早いじゃん」
「うーん、なんだか最近取り巻きが多いっていうか、視線を感じるんだよね」
さすが瑞穂! 根っからのアイドル気質は気づきが早い。
「でもさぁ、僕達のクラスの女子って真面目っていうか意外とそっけないよね。
でも、他のクラスの女子の見る目が何か違う気がするんだよね」
「そうだよなぁ、俺も気になってた」
里見もなの??
「とは言っても、僕は他校の女子にも見つめられているから…」
僕は瑞穂みたいに前向きに考える性格の人間が本当に羨ましい。
「12月に入って後3週間後にはクリスマスだから、皆んな彼女彼氏が欲しいのかも」
なんとなく匂わせてみる。
「あーーーっ、そう言う事ね!!」
瑞穂、そっちには鈍感なんだ。
「でもさ、ケーキ準備してプレゼントも準備してオマケに何処にデートに行くかも考えなきゃなんでしょう…
僕、面倒くさくて嫌かもなぁ」
与える方じゃなくて与えられる方なら良いのか?
聞きたい所をグッと我慢…。
「そうかなあ?俺は案外驚かせたいタイプかも。
喜んだ顔見れたら嬉しくない?」
僕は里見に一票だな。
与える事に喜びを感じる女子なら瑞穂がいいのか…?
ガチャと部屋の扉が開いて東が入ってきた。
「お待たせ〜。なんかさっき一年の女子から家庭科でクッキー焼いたからぁってコレ貰った」
手作りクッキーの思惑なんて何も感じていない東が清々しい笑顔でクッキーを見せてきた。
すでに女子達の「イケメンの彼女になる戦いは」は始まっていたようだ。
クリスマスも近い冬になると一気に受験シーズン感が強くなる。
僕達は高校大学一貫校に通ってはいるけど、一応高校3年生。
勉強しなくてもいいと言う訳ではない
落第する可能性も、無きにしもあらず。
不安な要素は、取り除いておきたい
僕と数多は放課後にカフェで勉強することが多くなった。
なんとなくだけど、家で勉強するよりカフェで勉強した方がはかどる気がする。
聞けば教えてくれる数多がいるのも大きい。
僕達はなるべく他のお客さんの迷惑にならない様、極力小さな声か筆談で会話をする事が多くなった。
今日は少し勉強している学生が多い気がする。
1番奥のテーブルが、僕達のいつもの席。
僕は苦手な数学の問題に悪戦苦闘中
数多は鞄からイヤホンを取り出して、両耳につけた。
何を聞いているんだろう…英語のヒアリングかなぁ?
僕はノートに[何を聞いてるの?]
と書いて数多の前に差し出した。
数多はそれを読むと、何も言わずに自分の右耳のイヤホンを外して、僕の左耳にそれをさした。
リズミカルな音楽が流れている。
勉強じゃなくて音楽を聴いてたんだ。
この曲を聴くとテンションが上がるのかな?
なんて思いながらしばらく音楽を聴いていた。
あれっ?これってクリスマスソング?
僕はまたノートに
[これってクリスマスソングだよね?]
と書いて数多に見せた。
小さくコクリと頷く。
[24日は一緒にクリスマスケーキを食べよう]
僕のメモの下に数多が書き足す。
笑顔が止まらない。見られると恥ずかしいから、思わず下を向いてしまった。
[もちろんだよ]と書き足してたけどね。
ワイヤレスじゃ無くてイヤホンとかってグッと距離が近く感じるの僕だけかな?
でも、僕のクリスマスの戦いは、これからだった。
なぜなら数多の周りが騒がしい…
同じクラス故、知りたくないことまで知ってしまう。
違うクラスの女子なのに、いきなり教室に入ってきて
「数多君、金魚のキーホルダー、カバンにつけてるよね?
金魚が好きなのかなぁと思って、可愛い金魚のグッズがあったから買ってきたんだ。これあげる」
と、プレゼントを差し出したり
数多とすれ違い様に下級生女子が、
「センパーイ」
って呼んで手を振ってみたり、なんだか知らないけど、体育館裏に呼び出されたり。
クリスマスって1年に1度の大大大イベントだったんだ。
今までは恋愛対象だと思っていた女子が焼きもちの対象になるなんて全くもって青天の霹靂。
申し訳ないが数多は僕の彼氏。
渡す訳にはいかない。
とは言っても、僕には何をする術も無くただ平静を装う事しか出来なかった。
「どうしたの?最近元気ないね」
「そうかなぁ」
「何か気になることでもあるの?」
「いやー気になるっていうか…数多ってモテるなぁって思って」
「もしかしてそこ気にしてたの?」
「うん」
「だから日向はもっと自分に自信を持っていいんだって!俺の言った事忘れた?俺が好きだって思った人とじゃなきゃ付き合いたく無いって言っただろ」
数多に言われると、少し自分に自信が持てる気がする。
「数多はどうして僕の事を好きになってくれたの
新入生歓迎会がきっかけとか?」
「もっと前から」
もっと前…??
驚いて数多の方に顔を向ける。
左の口角を少し上げクスッっと数多が笑った。
数多は意地悪な事を考えている時、いつもこの顔をする。この顔を知っているのは僕だけだと思うけど、
僕達にそんな接点あったかな??
