あと1週間足らずで、僕達の高校生活最後の夏休みが終わってしまう。
グランピングに行った後に5人のメンバーで集まったのは、プールに遊びに行ったのが一度あった位かな。
さすがに高校生の夏休み、祖父母の家にお墓参りに行ったり、学校の宿題が山積みになっていたりと思いの他慌ただしい。
結局のところ、僕達の集まりはほぼほぼグループチャットでのやりとりで終わってしまった。
いくら高校大学一貫校だからといっても全然勉強しない訳にはいかない。
選んだ学部や学科によっては校舎が遠かったりする。
僕は文系に進むつもり。
数多は理系なのか文系なのかどっちを選ぶんだろう?
瑞穂、里見、東は理系は自分には無理……と端から諦めている様で、3人とも文系に進むつもりなのは薄々わかっていた。
もし数多が理系に進むのなら、校舎が離れてしまう。
〔文系に行くのか理系に行くのか…〕
こんな簡単な質問もなかなか聞けずにいる。
何故なら数多は成績優秀だから、理系の方が確率が高い。
「数多に会いたいなぁ…今何やってるんだろう。
生徒会の仕事が忙しいとか言ってたなぁ。」
そんな独り言を呟きながら退屈な学校の宿題に頭を悩ませている僕。
数学が分からない!誰がこんな公式を考え出したんだ?
どんなに考えたって分からないものは分からない。
「よし!少し休憩しよう」
エアコンの効いた部屋の窓を開け、外の空気を吸おうと大きく伸びをした時メールの着信音が鳴った。
「誰かなぁ?」
携帯を開くと数多からだった。
・ 宿題終わった?
一行だけの短いメール
・まだ終わってない…一息ついてたところ。数学が難し過ぎて解けないでいる(笑)今どこに居るの?
・学校。下級生に生徒会の引き継ぎしてた。
・夏休みなのにそんな事もするんだ、大変だね。
そんなたわいないメールで僕の疲れは吹っ飛んだ。
・引き継ぎが終わって今から帰るんだけど日向、時間あるならカフェでお茶しながら一緒に勉強しない?
数多からの突然のお誘いに僕は携帯を両手で抱えた。
・行く行く!
頭を使い過ぎて糖分摂取したいと思ってたところ!
数学で分かんないとこあるの教えてくれる?
俺で分かる所ならいくらでも教えるよ。頑張ってるんだな。
数多はいつも僕が欲しいと思っている言葉をくれる。
・じゃあ今から20分後に待ち合わせしよう
勉強道具忘れずに持ってきて。
・うん、わかった
こんな些細なやり取りが嬉しい。
僕たちの学校近くには、おしゃれなカフェは1件しかない。いちいち名前を確認しなくてもカフェだけで分かってしまうのは逆に便利かもしれない。
僕は大急ぎでカバンに宿題道具を突っ込んで、自転車で集合場所に向かった。
数多はまだ来ていないみたいだけど、取り敢えず席を確保しておこう。
お店の中はそれほど混んでいない。暑過ぎて外に出れないのかもしれない。
周りを見渡すと、ちょうど一番奥の隅っこの席が空いていた。
僕はそこにカバンを置いて2人分の席を確保した。
・今着いたよ。一番奥の席。
数多にメールを送る。
2 〜3分後には、数多が店内に入ってきた。
10日会っていないだけなのに数多はなんだか大人びて見えて、僕は思わず目を伏せた。
「そんなに待ってないよね?」
「うん」
「なら良かった。ドリンク注文しに行こう」
数多に声をかけられて頭をあげた。
「日向は何にするの?」
「うーん、僕はねいつも抹茶フラペチーノなんだ。生クリームは少なめで」
「いつも抹茶フラペチーノなの?」
「うん。他のも試そうと思うんだけど、結局いつも抹茶フラペチーノになっちゃうんだよね」
「そうか〜もう日向のいつもの覚えたから」
それってまた一緒に行くって意味だよね…??
なんでこんな些細な言葉にもドキドキするんだろう。
「数多は何を注文するの?」
「俺?俺はいつもコーヒーフラペチーノ…じゃなくて
大体アイスコーヒーなんだけどむちゃくちゃ暑い時はコーヒーフラペチーノとかかな」
「アイスコーヒーか〜。でも、暑い日なコーヒーフラペチーノだね、僕も覚えたよ。今度来た時は頼んでおくよ」
夏休みが終わっても、放課後にカフェに来る事はいつでも出来るはずだから。
店員さんからドリンクを受け取り、僕たちは席に着いた。
早速、鞄から勉強道具を取り出して机に広げた。
「数学で分からない所はここなんだけど数多、分かる?」
「ここか…これは一見こーやって解く様に思えるけど」
数多先生が僕の宿題を見てくれる。こんな彼氏が僕にいていいんだろうか?
「数多はもう宿題終わったの?」
「うん、生徒会の引継ぎとかあるの分かってたし、もうさっさと終わらせちゃったんだよ」
「すご…………」
そんなに簡単に終わらせれるものなんだ
「で、その生徒会の引き継ぎとやらは、上手くいったの?」
僕には分からない世界
「もうほぼほぼ終わって、後はフォローにまわるだけだから。夏休み明けは今までより一緒に入れると思う」
「そうか」
ダメだぁぁ〜ニヤニヤが止まらない。
誰も今の僕を見ないでくれぇ。頼む!!
ニヤニヤしすぎて気持ち悪くないかなぁ。ちょっと心配になるレベル。
そうだ肝心なことを聞き忘れていた!
「あのさあ…
数多って、大学は理系に行くの?それとも……」
「あぁそれね、最初は理系って思ってたんだけど、将来はやっぱり営業とかやってみたいから文系にしようと思ってる。日向は文系?」
「うん。僕は文系」
「そうじゃないかなぁと思ってた」
やっぱり見透かされてる
「って言うか、まさか僕が文系にすると思って理系から変えたなんて事はないよね?」
今の僕は脳と口が連動している様で、思った事が言葉になってしまっている。
「日向、心の声が漏れてるよ」
数多がクスっと笑った。
「えっ?今僕しゃべってた?」
「やっぱりね」
「日向は心配しなくていいよ。俺は本当に文系にしようと自分で決めたんだから」
「うん、分かった。正直に話すと…数多に理系にするって言われたら一緒に大学通えないなぁって思って寂しかったんだ。
だから、文系って聞けて安心した」
「気にしないでなんでも聞いてくれたらいいよ」
僕は抹茶フラペチーノを思い切り擦った。
「暑い夏はこういうフラペチーノがいいね」
なんてたわいもない話をしながら、時間が過ぎていった。
気が付くと店内に数人居たお客さんがもうい居なくなっている。
もうそろそろ僕たちも帰ったほうがいいかも。
無駄に長居するのは気が引ける。
「そろそろ帰らないといけないね」
2人の時間が終わってしまうのは寂しいが、また来たらいいと考えれば悲しくは無い。
その時机の上に置いてあった僕の携帯に電話がかかってきた。
発信者はラブリーちゃん♡
げっ!!
僕は急いで携帯を掴み取って電源を切った。
数多はラブリーちゃん♡を見逃しただろうか?
いや、ハンターの目で捉えていたかもしれない…
「じゃあ、あの、僕、グラス返してくるわ」
動揺が隠せない。
数多のグラスをトレーに載せようとした瞬間、僕の手と
数多の手がぶつかってしまった。
ガチャガチャと音を立ててグラスが倒れかけた。
「危ない!!」
高校生の運動神経をなめないで欲しい。
すんでのところで、氷をぶちまけずに済んだが僕のズボンにしぶきが飛んだ。
「冷た!」
僕は濡れたズボンを慌ててハンカチで拭いた
でもちょっとシミになっている
「ごめん、僕ちょっとトイレで汚れとってくるよ」
「俺も一緒に行こうか?」
数多が立ち上がって、僕についてこようとした
「大丈夫だよ…これぐらい一人で出来るから…
ちょっと待ってて」
僕は急いでトイレに向かった。
汚れた部分を水に濡らしてハンカチで拭いた。
「あーあ、びっくりした!なんであのタイミングかなぁ??姉ちゃん!」
僕には一人暮らしをしている姉がいる。
姉が家を離れる前、
「新しい電話番号を教えるから携帯を貸して」
言われるがままに携帯を渡したら登録名がラブリーちゃん♡だった。
姉の性格はよく分かっているし数多と付き合う前だったから気にも止めていなかったが、今度会ったら叱ってやろう。
そんなことを呟きながらトイレのドアを開けたとき数多がちょうどこっちに歩いてくる姿が見えた。
「あれ数多もトイレ?」
数多はすれ違い様に、僕を壁に押し付けて僕の瞳を至近距離で覗き込んできた。
「何??どうした?」
僕は慌てて数多の左腕を掴んだ。
「日向のことが心配になって来た。
ねえ、日向は誰のもの?」
「へっっ??僕??」
予想を遥かに超える急展開に僕の脳は追いつかない。
「ねえ、答えて」
「えっとぉ、数多の……もの?」
「そうだよね、俺のものだよね?」
そう言って数多が僕にキスをしてきた。
ちょっと、どうした??何があった?
驚きながらも僕はそのキスを受け入れた。
でも、さすがに他の誰かに見られたらやばい。
いや、恥ずかしすぎる!……「ねぇ、誰か来るかも…」
僕は数多の体を押した。
「誰も来ないよ。今お客さんゼロだから」
そう言ってもう一度キスしてきた。
「さっきの電話誰から?」
やっぱり…数多の目はしっかりとラブリーちゃん♡を捉えていた。
僕は赤くなった顔を隠しながら数多の後を歩いている。
数多は着信相手が姉であった事にかなり安心した様でトイレにも入らず一緒に席に戻ろうとしている訳で…。
僕は変な恥をかいただけだった。
「実はさっき母親からどこにいるのってメールが来て。
カフェでお茶してるって返信したら、家族の分も買ってきてって……。
今から迎えに行くから〜って。
俺から誘っといて一緒に帰れなくなってごめん」
数多のお母さんが今から迎えに来るらしい。
「いや、全然大丈夫だよ。
ていうか、学校から歩いてここまで来たの?
この炎天下の中を……」
「うん。今日は親が学校まで送ってくれたんだけどどうしても日向に会いたくなって」
そんなこと言われたら、ますます数多の事好きになってしまう。
会えなくても平気な日がどんどん少なくなって、
会いたいと思う日がどんどん増えてくる。
大好きな気持ちがどんどん膨れてもう抑えられないかもしれない。
グランピングに行った後に5人のメンバーで集まったのは、プールに遊びに行ったのが一度あった位かな。
さすがに高校生の夏休み、祖父母の家にお墓参りに行ったり、学校の宿題が山積みになっていたりと思いの他慌ただしい。
結局のところ、僕達の集まりはほぼほぼグループチャットでのやりとりで終わってしまった。
いくら高校大学一貫校だからといっても全然勉強しない訳にはいかない。
選んだ学部や学科によっては校舎が遠かったりする。
僕は文系に進むつもり。
数多は理系なのか文系なのかどっちを選ぶんだろう?
瑞穂、里見、東は理系は自分には無理……と端から諦めている様で、3人とも文系に進むつもりなのは薄々わかっていた。
もし数多が理系に進むのなら、校舎が離れてしまう。
〔文系に行くのか理系に行くのか…〕
こんな簡単な質問もなかなか聞けずにいる。
何故なら数多は成績優秀だから、理系の方が確率が高い。
「数多に会いたいなぁ…今何やってるんだろう。
生徒会の仕事が忙しいとか言ってたなぁ。」
そんな独り言を呟きながら退屈な学校の宿題に頭を悩ませている僕。
数学が分からない!誰がこんな公式を考え出したんだ?
どんなに考えたって分からないものは分からない。
「よし!少し休憩しよう」
エアコンの効いた部屋の窓を開け、外の空気を吸おうと大きく伸びをした時メールの着信音が鳴った。
「誰かなぁ?」
携帯を開くと数多からだった。
・ 宿題終わった?
一行だけの短いメール
・まだ終わってない…一息ついてたところ。数学が難し過ぎて解けないでいる(笑)今どこに居るの?
・学校。下級生に生徒会の引き継ぎしてた。
・夏休みなのにそんな事もするんだ、大変だね。
そんなたわいないメールで僕の疲れは吹っ飛んだ。
・引き継ぎが終わって今から帰るんだけど日向、時間あるならカフェでお茶しながら一緒に勉強しない?
数多からの突然のお誘いに僕は携帯を両手で抱えた。
・行く行く!
頭を使い過ぎて糖分摂取したいと思ってたところ!
数学で分かんないとこあるの教えてくれる?
俺で分かる所ならいくらでも教えるよ。頑張ってるんだな。
数多はいつも僕が欲しいと思っている言葉をくれる。
・じゃあ今から20分後に待ち合わせしよう
勉強道具忘れずに持ってきて。
・うん、わかった
こんな些細なやり取りが嬉しい。
僕たちの学校近くには、おしゃれなカフェは1件しかない。いちいち名前を確認しなくてもカフェだけで分かってしまうのは逆に便利かもしれない。
僕は大急ぎでカバンに宿題道具を突っ込んで、自転車で集合場所に向かった。
数多はまだ来ていないみたいだけど、取り敢えず席を確保しておこう。
お店の中はそれほど混んでいない。暑過ぎて外に出れないのかもしれない。
周りを見渡すと、ちょうど一番奥の隅っこの席が空いていた。
僕はそこにカバンを置いて2人分の席を確保した。
・今着いたよ。一番奥の席。
数多にメールを送る。
2 〜3分後には、数多が店内に入ってきた。
10日会っていないだけなのに数多はなんだか大人びて見えて、僕は思わず目を伏せた。
「そんなに待ってないよね?」
「うん」
「なら良かった。ドリンク注文しに行こう」
数多に声をかけられて頭をあげた。
「日向は何にするの?」
「うーん、僕はねいつも抹茶フラペチーノなんだ。生クリームは少なめで」
「いつも抹茶フラペチーノなの?」
「うん。他のも試そうと思うんだけど、結局いつも抹茶フラペチーノになっちゃうんだよね」
「そうか〜もう日向のいつもの覚えたから」
それってまた一緒に行くって意味だよね…??
なんでこんな些細な言葉にもドキドキするんだろう。
「数多は何を注文するの?」
「俺?俺はいつもコーヒーフラペチーノ…じゃなくて
大体アイスコーヒーなんだけどむちゃくちゃ暑い時はコーヒーフラペチーノとかかな」
「アイスコーヒーか〜。でも、暑い日なコーヒーフラペチーノだね、僕も覚えたよ。今度来た時は頼んでおくよ」
夏休みが終わっても、放課後にカフェに来る事はいつでも出来るはずだから。
店員さんからドリンクを受け取り、僕たちは席に着いた。
早速、鞄から勉強道具を取り出して机に広げた。
「数学で分からない所はここなんだけど数多、分かる?」
「ここか…これは一見こーやって解く様に思えるけど」
数多先生が僕の宿題を見てくれる。こんな彼氏が僕にいていいんだろうか?
「数多はもう宿題終わったの?」
「うん、生徒会の引継ぎとかあるの分かってたし、もうさっさと終わらせちゃったんだよ」
「すご…………」
そんなに簡単に終わらせれるものなんだ
「で、その生徒会の引き継ぎとやらは、上手くいったの?」
僕には分からない世界
「もうほぼほぼ終わって、後はフォローにまわるだけだから。夏休み明けは今までより一緒に入れると思う」
「そうか」
ダメだぁぁ〜ニヤニヤが止まらない。
誰も今の僕を見ないでくれぇ。頼む!!
ニヤニヤしすぎて気持ち悪くないかなぁ。ちょっと心配になるレベル。
そうだ肝心なことを聞き忘れていた!
「あのさあ…
数多って、大学は理系に行くの?それとも……」
「あぁそれね、最初は理系って思ってたんだけど、将来はやっぱり営業とかやってみたいから文系にしようと思ってる。日向は文系?」
「うん。僕は文系」
「そうじゃないかなぁと思ってた」
やっぱり見透かされてる
「って言うか、まさか僕が文系にすると思って理系から変えたなんて事はないよね?」
今の僕は脳と口が連動している様で、思った事が言葉になってしまっている。
「日向、心の声が漏れてるよ」
数多がクスっと笑った。
「えっ?今僕しゃべってた?」
「やっぱりね」
「日向は心配しなくていいよ。俺は本当に文系にしようと自分で決めたんだから」
「うん、分かった。正直に話すと…数多に理系にするって言われたら一緒に大学通えないなぁって思って寂しかったんだ。
だから、文系って聞けて安心した」
「気にしないでなんでも聞いてくれたらいいよ」
僕は抹茶フラペチーノを思い切り擦った。
「暑い夏はこういうフラペチーノがいいね」
なんてたわいもない話をしながら、時間が過ぎていった。
気が付くと店内に数人居たお客さんがもうい居なくなっている。
もうそろそろ僕たちも帰ったほうがいいかも。
無駄に長居するのは気が引ける。
「そろそろ帰らないといけないね」
2人の時間が終わってしまうのは寂しいが、また来たらいいと考えれば悲しくは無い。
その時机の上に置いてあった僕の携帯に電話がかかってきた。
発信者はラブリーちゃん♡
げっ!!
僕は急いで携帯を掴み取って電源を切った。
数多はラブリーちゃん♡を見逃しただろうか?
いや、ハンターの目で捉えていたかもしれない…
「じゃあ、あの、僕、グラス返してくるわ」
動揺が隠せない。
数多のグラスをトレーに載せようとした瞬間、僕の手と
数多の手がぶつかってしまった。
ガチャガチャと音を立ててグラスが倒れかけた。
「危ない!!」
高校生の運動神経をなめないで欲しい。
すんでのところで、氷をぶちまけずに済んだが僕のズボンにしぶきが飛んだ。
「冷た!」
僕は濡れたズボンを慌ててハンカチで拭いた
でもちょっとシミになっている
「ごめん、僕ちょっとトイレで汚れとってくるよ」
「俺も一緒に行こうか?」
数多が立ち上がって、僕についてこようとした
「大丈夫だよ…これぐらい一人で出来るから…
ちょっと待ってて」
僕は急いでトイレに向かった。
汚れた部分を水に濡らしてハンカチで拭いた。
「あーあ、びっくりした!なんであのタイミングかなぁ??姉ちゃん!」
僕には一人暮らしをしている姉がいる。
姉が家を離れる前、
「新しい電話番号を教えるから携帯を貸して」
言われるがままに携帯を渡したら登録名がラブリーちゃん♡だった。
姉の性格はよく分かっているし数多と付き合う前だったから気にも止めていなかったが、今度会ったら叱ってやろう。
そんなことを呟きながらトイレのドアを開けたとき数多がちょうどこっちに歩いてくる姿が見えた。
「あれ数多もトイレ?」
数多はすれ違い様に、僕を壁に押し付けて僕の瞳を至近距離で覗き込んできた。
「何??どうした?」
僕は慌てて数多の左腕を掴んだ。
「日向のことが心配になって来た。
ねえ、日向は誰のもの?」
「へっっ??僕??」
予想を遥かに超える急展開に僕の脳は追いつかない。
「ねえ、答えて」
「えっとぉ、数多の……もの?」
「そうだよね、俺のものだよね?」
そう言って数多が僕にキスをしてきた。
ちょっと、どうした??何があった?
驚きながらも僕はそのキスを受け入れた。
でも、さすがに他の誰かに見られたらやばい。
いや、恥ずかしすぎる!……「ねぇ、誰か来るかも…」
僕は数多の体を押した。
「誰も来ないよ。今お客さんゼロだから」
そう言ってもう一度キスしてきた。
「さっきの電話誰から?」
やっぱり…数多の目はしっかりとラブリーちゃん♡を捉えていた。
僕は赤くなった顔を隠しながら数多の後を歩いている。
数多は着信相手が姉であった事にかなり安心した様でトイレにも入らず一緒に席に戻ろうとしている訳で…。
僕は変な恥をかいただけだった。
「実はさっき母親からどこにいるのってメールが来て。
カフェでお茶してるって返信したら、家族の分も買ってきてって……。
今から迎えに行くから〜って。
俺から誘っといて一緒に帰れなくなってごめん」
数多のお母さんが今から迎えに来るらしい。
「いや、全然大丈夫だよ。
ていうか、学校から歩いてここまで来たの?
この炎天下の中を……」
「うん。今日は親が学校まで送ってくれたんだけどどうしても日向に会いたくなって」
そんなこと言われたら、ますます数多の事好きになってしまう。
会えなくても平気な日がどんどん少なくなって、
会いたいと思う日がどんどん増えてくる。
大好きな気持ちがどんどん膨れてもう抑えられないかもしれない。
