楽しくもないがつまらなくもない授業を終えた放課後、僕は飼育室に向かった。
金魚もメダカも生きている。
毎日餌をあげなくてはいけない。
瑞穂も里見も東も割と顔を出す方だと思うが、大体いつも僕より来るのが遅い。
今日も僕が1番乗り。
飼育室は他の生徒の出入りがあまり無い。
部屋の窓を開けて、空気の入れ替えをしようと思った。
その時、中庭を歩いている数多を見つけた。
手には何やら書類を抱えている。
「おーーーい、数多」
僕は大きく手を振った。
数多は大きく手を振る僕に気づいた様で、左側の口角を少し上げてクスッと笑った。
「これからどこ行くの?何か提出物…」
僕が言い終わるか終わらないうちに、後ろから隣の組の女子2人が
「数多く〜〜〜ん」
と、言いながら近寄ってきた。
2人は僕をチラッと見たが、気にする様子もなく
数多を囲んで何やら話し始めている。
そのまま数多は2人の女子に風の如く連れ去られてしまった。
僕は消え去る3人を見つめる事しか出来なかった。
数多って生徒会長で皆んなに頼られてて…
成績優秀でカッコいい。
数多にとっての僕はどんな存在なんだろう?
窓の下に座り込んで暫くの間ぼんやり考えていた。
「今日はみんなやけに遅いなぁ。来ないのかなあ」
瑞穂も里見も東もなかなか来ない。
そう思っていた時、メールの着信音が鳴った。
里見からだった。
「悪い。今日は用事が出来たから行けそうにないわ。
瑞穂は病院に行くって言ってたし、東は何故か先生に捕まってる。多分全員行けないと思う」
「そうか。今日は僕1人か…もうメダカと金魚にも餌をやったし、帰ろうかなぁ」
僕はカバンを肩にかけて下駄箱のほうに歩いて行った。
下駄箱から靴を取り出し、下に置いた。
落ちそうになったカバンを肩に戻そうとした時、1人の女子とぶつかってしまった。
その子がちょっと前のめりになったのが見えた。
「あっ、ごめん、大丈夫?」
僕は女の子の顔を覗き込んだ。
初めて見る顔だった。
その子も、僕の顔をじっと見つめている。
少しもじもじした感じで。
「はっ、はい……大丈夫ですけどぉぉ。
今ぶつかってきたのってぇ、もしかしてわざとかなぁ??なんて…。
あのぉ、前から思ってたんですけどぉ、私達よく目が合いますよねぇ。
振り返ると、いつも日向先輩が私の事を見てるなぁって思ってて。
それで〜〜〜っつ、日向先輩はいつから私のこと知ってたんですかぁ?」
あまりのびっくり発言に僕は何も言い返せない。
初めて会ったんじゃ………ないの??
えっ?えっ?ってか何?僕、君の事なんて何一つ見てないんですけど!
「言いづらいなら私の方から言ってもいいんですけどぉぉ」
なにを?何を言うの?
遠くの方からその子の声が聞こえる気がした。すぐ隣にいるのに…
あまりにびっくりすると人間は思考が停止してしまうものなんだと、その時初めて悟った。
その瞬間
「おい、何やってんだよ。一緒に帰る約束してただろう。早く靴履けよ。もう行くぞ」
「う、うん」
誰だっけ?顔を見る余裕なんて全然ない。
僕は大慌てで靴を履いた。
その声の主は僕の肩を抱いて、校門の方に歩き出した。
後ろから「ちっっ!」と舌打するのが聞こえてきた
怖っっ…今、チッて舌打ちしたよね?
一体誰なんだよ。あの女子は??
わざとなんてぶつかってないし!
後になるほど色んな思いが湧き上がってくる。
とりあえず、あの場を救ってくれた声の主にお礼を言わなければいけない。
その声の主の方を見上げた。
「えっ?数多?なんでここに?あっ、ごめん、とりあえずありがとう。助かったよ〜って言うかあの子誰だったんだろう」
動揺は隠せないが、とりあえずお礼は言えた。
まさかあの子、僕の後を追いかけて来ないよね?
後ろが気になって振り返ってしまう。
「お前わかってんのか?無防備すぎだろう。何キラキラした目で女の子の顔、覗き込んでるんだよ」
「はっつ?何言ってんだよ。誰がキラキラして…」
「お前ほんとに分かってないの?あんな顔されて声かけられたら勘違いするだろう。
それとも側で見張ってないといけないタイプ…なのか?」
「なに、それ?見張ってないといけないタイプとか…」
僕は手に持っていたカバンをぎゅっと抱きしめた。
「えっ、でもなんで数多がここにいるの?」
数多はさっき隣のクラスの女子達に連れ去られたはず…
数多が言うには
「「多分2年生の女子だと思うんだけど、日向君の下駄箱の前でウロウロしてる子がいてー。
日向先輩は私の王子様♡恥ずかしがって日向先輩から話かけられないなら私がチャンスを作ってあげないと〜。とかあーだこーだ言ってるからなんかヤバくないかなぁと思って。
数多君って日向君と同じクラスで仲良さげだから教えてあげてよ」
って隣のクラスの女の子達がわざわざ俺に教えてくれたんだよ。だからお前の事見てたんだ」」
そうだったんだ。
え…でもこれって数多?数多との会話だよね?
「助けてもらってあれだけど、なんか言葉遣いが今までと違くない??」
「お前、危なっかしすぎるんだよ。これからはお前に対して素の俺で行くから。
だから、こういう言い方になると思うけど覚悟しといて」
それってどういう意味?
数多の手が僕の肩をもっと強く抱きしめた。
って言うか、あのタイミングで現れた数多はもう王子様でしか無くないか??
隣のクラスの女子達にはもう感謝しかない。
あの妄想女子は無かった事にしておこう。
肩を抱かれたままの僕はもう許容範囲を越えそうだ。
このままではマズイ!
「あっ、そうだこの前借りた上着、返すのすっかり遅くなっちゃったけど今度返すから」
「あぁ、あれね」
「返すついでと言ってはなんなんだけど今度皆んなで大きなテントのある、ほらバーベキューとか出来る、なんていうんだっけ?もうすぐ夏休みだしさ、そこ行かないかなって」
「グランピング?」
「そう、それ!」
「皆んなって瑞穂と里見と東?」
「そう!」
「いいかもね。なら電車で行けそうな所探しておくよ」
「ありがとう」
多くを言わなくてもすぐ悟る数多は偉大だ。
僕は数多と高校生活最後の夏休みを過ごしたかった。
他の3人には後から話せばいいだろう。
ノリがいいからきっと許してくれるハズ
大学までストレートに行ける高校を頑張って受験した自分を褒めてあげたい。
数多と僕は少し長い階段を登り切って校門までゆっくり歩いた。後ろからは誰も追いかけて来なかった。
金魚もメダカも生きている。
毎日餌をあげなくてはいけない。
瑞穂も里見も東も割と顔を出す方だと思うが、大体いつも僕より来るのが遅い。
今日も僕が1番乗り。
飼育室は他の生徒の出入りがあまり無い。
部屋の窓を開けて、空気の入れ替えをしようと思った。
その時、中庭を歩いている数多を見つけた。
手には何やら書類を抱えている。
「おーーーい、数多」
僕は大きく手を振った。
数多は大きく手を振る僕に気づいた様で、左側の口角を少し上げてクスッと笑った。
「これからどこ行くの?何か提出物…」
僕が言い終わるか終わらないうちに、後ろから隣の組の女子2人が
「数多く〜〜〜ん」
と、言いながら近寄ってきた。
2人は僕をチラッと見たが、気にする様子もなく
数多を囲んで何やら話し始めている。
そのまま数多は2人の女子に風の如く連れ去られてしまった。
僕は消え去る3人を見つめる事しか出来なかった。
数多って生徒会長で皆んなに頼られてて…
成績優秀でカッコいい。
数多にとっての僕はどんな存在なんだろう?
窓の下に座り込んで暫くの間ぼんやり考えていた。
「今日はみんなやけに遅いなぁ。来ないのかなあ」
瑞穂も里見も東もなかなか来ない。
そう思っていた時、メールの着信音が鳴った。
里見からだった。
「悪い。今日は用事が出来たから行けそうにないわ。
瑞穂は病院に行くって言ってたし、東は何故か先生に捕まってる。多分全員行けないと思う」
「そうか。今日は僕1人か…もうメダカと金魚にも餌をやったし、帰ろうかなぁ」
僕はカバンを肩にかけて下駄箱のほうに歩いて行った。
下駄箱から靴を取り出し、下に置いた。
落ちそうになったカバンを肩に戻そうとした時、1人の女子とぶつかってしまった。
その子がちょっと前のめりになったのが見えた。
「あっ、ごめん、大丈夫?」
僕は女の子の顔を覗き込んだ。
初めて見る顔だった。
その子も、僕の顔をじっと見つめている。
少しもじもじした感じで。
「はっ、はい……大丈夫ですけどぉぉ。
今ぶつかってきたのってぇ、もしかしてわざとかなぁ??なんて…。
あのぉ、前から思ってたんですけどぉ、私達よく目が合いますよねぇ。
振り返ると、いつも日向先輩が私の事を見てるなぁって思ってて。
それで〜〜〜っつ、日向先輩はいつから私のこと知ってたんですかぁ?」
あまりのびっくり発言に僕は何も言い返せない。
初めて会ったんじゃ………ないの??
えっ?えっ?ってか何?僕、君の事なんて何一つ見てないんですけど!
「言いづらいなら私の方から言ってもいいんですけどぉぉ」
なにを?何を言うの?
遠くの方からその子の声が聞こえる気がした。すぐ隣にいるのに…
あまりにびっくりすると人間は思考が停止してしまうものなんだと、その時初めて悟った。
その瞬間
「おい、何やってんだよ。一緒に帰る約束してただろう。早く靴履けよ。もう行くぞ」
「う、うん」
誰だっけ?顔を見る余裕なんて全然ない。
僕は大慌てで靴を履いた。
その声の主は僕の肩を抱いて、校門の方に歩き出した。
後ろから「ちっっ!」と舌打するのが聞こえてきた
怖っっ…今、チッて舌打ちしたよね?
一体誰なんだよ。あの女子は??
わざとなんてぶつかってないし!
後になるほど色んな思いが湧き上がってくる。
とりあえず、あの場を救ってくれた声の主にお礼を言わなければいけない。
その声の主の方を見上げた。
「えっ?数多?なんでここに?あっ、ごめん、とりあえずありがとう。助かったよ〜って言うかあの子誰だったんだろう」
動揺は隠せないが、とりあえずお礼は言えた。
まさかあの子、僕の後を追いかけて来ないよね?
後ろが気になって振り返ってしまう。
「お前わかってんのか?無防備すぎだろう。何キラキラした目で女の子の顔、覗き込んでるんだよ」
「はっつ?何言ってんだよ。誰がキラキラして…」
「お前ほんとに分かってないの?あんな顔されて声かけられたら勘違いするだろう。
それとも側で見張ってないといけないタイプ…なのか?」
「なに、それ?見張ってないといけないタイプとか…」
僕は手に持っていたカバンをぎゅっと抱きしめた。
「えっ、でもなんで数多がここにいるの?」
数多はさっき隣のクラスの女子達に連れ去られたはず…
数多が言うには
「「多分2年生の女子だと思うんだけど、日向君の下駄箱の前でウロウロしてる子がいてー。
日向先輩は私の王子様♡恥ずかしがって日向先輩から話かけられないなら私がチャンスを作ってあげないと〜。とかあーだこーだ言ってるからなんかヤバくないかなぁと思って。
数多君って日向君と同じクラスで仲良さげだから教えてあげてよ」
って隣のクラスの女の子達がわざわざ俺に教えてくれたんだよ。だからお前の事見てたんだ」」
そうだったんだ。
え…でもこれって数多?数多との会話だよね?
「助けてもらってあれだけど、なんか言葉遣いが今までと違くない??」
「お前、危なっかしすぎるんだよ。これからはお前に対して素の俺で行くから。
だから、こういう言い方になると思うけど覚悟しといて」
それってどういう意味?
数多の手が僕の肩をもっと強く抱きしめた。
って言うか、あのタイミングで現れた数多はもう王子様でしか無くないか??
隣のクラスの女子達にはもう感謝しかない。
あの妄想女子は無かった事にしておこう。
肩を抱かれたままの僕はもう許容範囲を越えそうだ。
このままではマズイ!
「あっ、そうだこの前借りた上着、返すのすっかり遅くなっちゃったけど今度返すから」
「あぁ、あれね」
「返すついでと言ってはなんなんだけど今度皆んなで大きなテントのある、ほらバーベキューとか出来る、なんていうんだっけ?もうすぐ夏休みだしさ、そこ行かないかなって」
「グランピング?」
「そう、それ!」
「皆んなって瑞穂と里見と東?」
「そう!」
「いいかもね。なら電車で行けそうな所探しておくよ」
「ありがとう」
多くを言わなくてもすぐ悟る数多は偉大だ。
僕は数多と高校生活最後の夏休みを過ごしたかった。
他の3人には後から話せばいいだろう。
ノリがいいからきっと許してくれるハズ
大学までストレートに行ける高校を頑張って受験した自分を褒めてあげたい。
数多と僕は少し長い階段を登り切って校門までゆっくり歩いた。後ろからは誰も追いかけて来なかった。
