数多がいろいろ調べてくれたお陰で、電車で行けるグランピングを予約する事が出来た。
しかも数多のお母さんが、保護者として登録してくれたらしい。
瑞穂、里見、東の3人に関してはグループチャットで誘ってみた。
「絶対に行く」
「何時にどこ集合?」
「グランピングって例えば何処らへん?」
「何泊するの?いつ宿泊代支払えばいい?」
断ると言う考えは無さそうだった。
高校生活最後の夏休み。皆んなで過ごせるなんて本当に楽しみでしか無い。
旅行当日は数多のお母さんが僕の家の近くまで車で迎えに来てくれて、僕達を駅まで送ってくれた。
その代わりと言ってはなんだが、帰りは僕の母親が駅まで迎えに来て、数多を家まで送って行くことになった。
「おはよう。もう着いてたんだ、3人とも早かったんだね」
「いやーなんかさー、瑞穂と東が俺ん家に泊まりにきたいって言ってさぁ、じつはこの2人、昨日泊まってったんだよ。
でさぁ俺の母ちゃん、朝から仕事じゃん。
そのまま駅に送ってくれたんだけど、ちょっと早く着いちゃったんだよ」
「なんだ、里見ん家に前泊したんだ。旅行が待てなかったって事?」
「違うよ〜キャリーケースを1人でゴロゴロ転がしながら駅まで歩くのが嫌だったんだよぉ。」
瑞穂が口をとがらせて拗ねて見せた。
「そうそう、それにさあこんなお泊まり会なんて今までやってこなかったからさぁ〜。里見ん家にも一度行ってみたかったわけ。でも、すっごい楽しかったよ」
「へぇ、良かったじゃん」
「うん、そろそろ電車来てるんじゃない?中に入ろうよ。」
「あっ、そうだなぁ。乗り遅れたら大変だ。」
改札口を通って、目的地まで乗せてくれる電車を探した。電車はすでに到着していて発車の時間を待っていた。
僕達5人は慌てて電車に飛び乗った。
「あっという間に着いたね」
初めての景色は見ていて案外退屈しない物だった。
駅を降りると辺り一面山に囲まれていて、その側には川が流れ、大きな円形の白いテント達がドーンと存在感を放っている。
何ここ?異世界?
一度言ってみたかった
「空気がおいしい〜〜〜〜〜っつ」
全員が同じタイミングで叫んだのには、思わず笑ってしまった。
僕達は受付を済ませ、テントの番号を探した。
「ちょっと何ここ?想像以上なんだけど…」
「みんなで一緒に入ろうよ。抜け駆けは無しだよ」
その言葉にハッと我に帰った。
「じゃあみんな一斉にせーーーーーの」
ドアを開けて中に入った。
「すげーっ、ベッドでっかい」
「トイレ、俺ん家の3倍」
「冷蔵庫もキッチンもあるよ。しかもコーヒーメーカーも!」
「風呂、足伸ばせて入れるよ」
「テントって言うわりにすごいしっかりしてるんだね」
探検隊がピラミッドのお宝を発見したら、こんな感じになるんだろうか?
探索を楽しんだ後、僕達は一息ついて窓の外を眺めた。
「本当に自然が綺麗だよなぁ」
「山があって川があって」
「でもなんか、お腹すいたなぁ〜〜。何か食べようよ。」
そういえば朝ご飯を食べてから何も食べていなかった。
東の一言に、僕達もお腹が空いていた事に気が付いてしまった。
「来る途中にソフトクリームとか団子とか売ってる所なかった?」
瑞穂が思い出したように言う。
「あったよね…そこ行ってみる?」
「夕飯はバーベキューが出来るように材料の予約はしてあるから、昼は軽くカフェスタンドで済ませてもいいかも」
カフェスタンドぉぉぉ……なんて素敵な響き
何か青春じゃない??
売店でも同じ意味なんだろうけどなにかが違う!!
全員一致で、カフェスタンドで各々が好きなものを注文して食べる事になった。
何とかバーガーを食べているのもいれば、名物の団子を頬張っていたり、そばを啜っていたりとか…
男子高校生の食欲は計り知れない。
最後の締めはソフトクリーム。
ソフトクリームにハズレがあるのを今まで見たことが無い。
僕たちの胃袋は充分に満たされた。
「ねぇ後でテントの周りを散策してみない?」
「するよぉ〜、勿論する」
「さっき川もあったよな…川に足とかつけてみたくない?」
「なんかバトミントンとかしたいんだけど。僕、持ってきたんだよね」
「花火って川の近くでならしてもいいかなぁ?俺は花火を持ってきたよね〜。」
もうみんなが小学生に見えてきた。
夕飯まで僕達はバドミントン50回ラリーに挑戦する事にした…けど全然続かない。
室内と室外ではこんなに差が出るもんなんだろうか?
と言うより4人でラリーを続ける方が難しいと思う。
10分もしたらぜいぜい息が切れて足が重くなってきた。
「僕もう疲れた〜!!」
瑞穂がギブアップした所で川に足をつけて5人で涼んだ。
透き通った川の水が僕達の足の上を流れていく。
「スイカでも買ってこれば良かったな」
やっぱり夏の風物詩はスイカだよな…
夕飯のバーベキューは地元で取れた野菜が山盛りに盛られていた。
その上豚肉、鶏肉も皿いっぱい
男子高校生5人の胃袋を満たすのには充分…いや多すぎだ。
ちょっと部屋で休憩しよう…。
僕たちはベッドで横になろうとしたけど、男5人に用意されたベッドは何故か横並びにぴったりとくっついている。
「このベッドの距離感、間違ってない?これって…これで合ってるんだよね。僕ねれるかな?
絶対折り重なっちゃうよ」
朝からそうなっていたはずなのに、テンションが高すぎて誰も気が付かなかったらしい。
流石にベッド5台は多過ぎたのかも。
スタッフさんも配置に悩んだのだろう…最後にこの並びに辿り着いたのは理解が出来た。
僕は出来る事なら数多とベッドの上で話がしたかった。
隣同士でなければ絶対に声が通ってしまう…
絶望的だ……
「どーするよ」
「これはジャンケンかアミダだな」
「ジャンケンか〜僕ジャンケン弱いんだよなぁ。絶対負けるし」
「じゃあさ、ここに誘ってくれたの日向だし、日向が1番に決めていいんじゃない?皆んなはどう思う?」
「あぁ、まあいいけど」
「えっ、僕が1番に選んでいいの?
なら……えっとぉ1番窓際かその隣がいいな」
「じゃあ、数多が次に選べばいいよ。色々手配してくれたしさぁ」
東はそう言う所に気がつくタイプ。
「そうだよね、それでいいよ。僕達3人はじゃんけんで決めるから、なぁ〜」
ここから3人のじゃんけん大会が始まった。
数多は窓際から2番目のベットを選んだ。
つまり、窓際(部屋の奥)から僕、数多、里見、東、瑞穂となった訳。
5個のベッドの距離がバグっているから話は出来ないとしても数多の寝顔なら見る事は出来る。
それだけでも今の僕には充分幸せかもしれない。
そのうち瑞穂、里見、東の3人がトランプをやり始めた。
「日向って夜は何時に寝るの?」
「僕?そうだなぁ〜ゲームとか始めちゃうと朝方2時過ぎまでやっちゃう時もあるかも」
「そうなんだぁ、日向ってゲームやるんだ」
「うん、なるべく12時には終わる様にしてるんだけど」
「へぇーっ、ゲームっていつから始めたの?」
「えっとぉ、彼女と別れてからだから高1の終わり頃からかな」
「日向、彼女居たんだ」
「居たって言ってもそんな…あの…なんて言うかぁ〜あれだよ、アレ!!
友達の延長みたいな??手も繋いだことないし」
「ははは、なんでそんなに慌ててるんだよ」
「いや、だって。彼女が出来たのだってその時が初めてだったし」
「そうなんだ、日向から告白したの?」
「いや、された方…。あっ、数多は彼女とかいたの?」
流石に怖くて彼女いるの?とは聞けない。
「俺?居ないね」
「そんなにカッコいいのに?」
「告白された事は何度でもあるよ。
でも俺が好きじゃないのに付き合えないだろ」
「そうだよね…」
「俺は自分がちゃんと好きだって思った相手とじゃなきゃ付き合いたくないんだ。ノリで付き合うとかは考えられないなぁ」
僕はなんと無くで付き合ってしまった彼女に申し訳ないと思う。
でも、何度も告白された事があるって
分かってはいたけど、本人からそんな話を聞くのなんか嫌だな
「告白とかはした事あるの…?」
「ねえ、花火しようよ。川の側なら大丈夫でしょ」
僕の言葉にかぶる様にトランプに飽きた瑞穂がせがんで来た。
「空一面星だらけなんだけど〜なんてこと!
僕達の住んでる世界と本当に同じ世界なの…ここって?」
先に外に出ていた東が興奮して騒いでいる。
「どれどれ?うわぁー何コレ?お前ら早く来いよ。こっち、こっち」
里見が僕と数多に手招きをしている。
中庭に続く扉を開いて外に出ながら僕と数多は空を眺めた。
「まるでプラネタリウムだよ、ここ」
瑞穂が絞り出す様に呟いた。
「あの星、日向の瞳みたいだな」
は、、、なんだって?
数多、さすがにそれは恥ずいだろ
「ここら辺でいいだろ?まずは何から始める?」
「何があるの?ロケット花火は危ないかな」
満天の星の下で行われる5人だけの花火大会
5人もいると流石にあっという間だな。
「線香花火しかもう無いよ」
気付いたら5人で輪になって線香花火の先端をみつめていた。
「さっさと片付けて風呂入ろうぜ」
そうだ、風呂にはいりたいかも!
「なみなみにお湯をためたよー」
「最高に気持ちがいいなぁー。思いっきり伸びができるなんて最高かよ〜」
大きな浴槽で汗を流し、ベッドに潜り込んだ。
今日は楽しかった。いや楽しすぎた。
心地よい疲れってこういう事なのかな?
スースー スースー スースー
寝息?もう?
誰だろ…
さすがに疲れたんだな。
僕も今日は早く起きたからさすがに疲れた。
そろそろ寝むくなって……くるはずがない!!
だって、隣には数多が寝ているんだから。
ぐふぐふっ、すーっ、
スースーと言う寝息にぐふぐふと言う寝息が重なっておりなすハーモーニー
誰か2人は寝落ちしたのだろうか?
「僕と同じ位、星が綺麗〜」
あれは瑞穂の声…寝言か??
夢の中でもアイドルなんだ
スースーに、ぐふぐふに寝言…
という事はすでに3人は寝落ちしているはず!
数多は寝たのかな…
そっと数多の方に寝返りを打ってみた。
ゴソゴソッ
「日向、起きてるの?」
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや、最初から寝てない」
「そう…なんだ」
「あのさ、今日は本当に楽しかったね。なんかあっという間に時間が過ぎた感じがする」
「楽しみすぎて逆に興奮して眠れないとか」
「うん、それもあるかも。でさぁ、さっきの話の続きなんだけど数多って今まで付き合った人って本当にいないの?」
「うん。この人の事が本当に好きだって思った人としか付き合いたくないから一度もないよ。
付き合って下さいって告白された事は何度かあるけど」
「そうかぁ〜。じゃぁさぁ、なんていうか…
えっと、やっぱり男子は女子を、女子は男子を好きなのが当たり前で、男子が男子を好きなのって変なのかなぁ」
数多はこんなこと質問されて引いてないかなぁ。
喉が渇いてカラカラだ。
「そうだなぁ、一般的にはそういうことなんだろうけど、俺が好きになるのは男とか女とか関係ないと思ってる。
その人が好きっていうか。
一人間として魅力を感じて好きになるのかなぁって。
男でも女でも若くて歳でもそんなの関係ないと思ってる」
「そうか〜。僕が彼女の手を一回も握れなかったのは、僕の気持ちが彼女を好きになってなかったからかもしれないなぁ」
「日向」
「えっ?」
「彼女とは手も握ったことないんだよな?
俺が手を繋いでもいい?」
ドキドキしすぎて手に汗をかいていないか心配になってしまう。
「数多、この手繋ぎってどういう意味?
僕ちょっと…自分の都合の良いように考えちゃってもいいの?」
「都合の良い様に考えるっていうのはどういう意味で言ってる?」
「なんか意地悪だな」
数多が僕の髪を優しくなでてくれた。
暖かい指先と優しく頭を撫でられる気持ち良さに、疲れていた僕の瞼はゆっくり閉じていって…。
「日向?もう寝たの?」
まだまだ聞きたい事があるっぽい数多だけど僕の寝顔を見て諦めたらしい。
ありがとう、数多。


