先生、それって飼育委員じゃなきゃダメなんですか?

「ふあ〜っ、今日はいい天気だなぁ」
大きな伸びをしながら時計を見る。
時計は8時を指していた。朝の朝礼は8時25分。
「よし。20分寝れる」
携帯のアラームを8:20にセットして机の右側に置いた。
「おはよー。何?眠いの?」
隣の席の荒川が自分の椅子に座りながら声をかけきた。
「昨日寝たの朝の2時半だったんだよね」
「そんな遅くまで何やってたんだよ?」
「dead or arrive 生きるか死ぬかゲーム」
重力に負けそうな瞼と戦いながら質問に答える。
「何それ?初めて聞いた。どんなゲームなの?」
「2人以上1組で…相手を見殺しにしてもいいし、自分を犠牲にしてもいいし、チーム内で戦うか対戦相手を見つけて戦うかは……兎に角勝ち進むって言うゲームなんだよ」
「意外と心理戦だな。お前どんなネームで登録してんの?」
「僕?僕は……オ…ねむ…」

ブーブーブーッッ 耳元で小刻みに動く携帯を慌てて止めた。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
流石まだ高校生、20分寝たら頭が随分スッキリした。

その時ガラガラっと扉が開き、担任が教室に入って来た。
「皆んなおはよう。今日も一日勉強頑張りましょう。
出席を取る前にえっーーーっと、今年の新入生歓迎会の事なんだが……。
いつもなら2年生にやって貰う事になってたんだが、今回は歓迎会の時期が少し早まったと言う事で〜。
修学旅行の準備と重なる……らしいんだな。
それで3年生にその役をやって欲しいと頼まれてしまって…。
日向・瑞穂・里見・東お前ら飼育委員だったよな。
放課後活動が1番少ないと言う理由でお前ら飼育委員が適任だと選ばれた!おめでとう。是非宜しく頼む」

「はっ??おめでとう…?」

なんともムリムリな宜しく頼むだ。
名前を呼ばれた4人が一斉に席から浮き上がった様に思えた。
朝から何を言っているんだろう、この担任は。
さっき少しでも眠っておいて良かった気がする。

「なんで今年に限って3年生なんですか?いくら大学までの一貫校だからって僕やりたくないよぉ。他の委員の子達だってやってもいいって思ってるかもしれないし…」
僕は教室を見渡した。

信じられない程の静寂。誰も僕と目を合わせない。
しーーーーーーーーーーーん。と言う言葉が本当に聞こえた気がした。

そりゃそうかもしれない。
2年生がやると思ってたんだから。
僕の学校は全員が何かしらの委員会に入らなければならない。
放課後活動っていう感じ?
運動をやりたい生徒は外部のクラブチームに入っているし、優秀な生徒から大学の学部や学科を選べるから勉強をしたい生徒もいるんだろう。中にはもっといい大学を目指して頑張っている生徒もいる。

「先生、僕あまり目立ちたくないんで…その為に飼育委員を選んだんですけど」
静寂を気にせず声を発したのは瑞穂 蓮(みずほ れん)
ふわふわの茶色の髪にぷるんとした唇でいかにもアイドル風のイケメン。
他校の女子達が瑞穂を隠し撮りする為に、放課後に待ちぶせをしているらしい。
モテるのもなかなか生きづらそうだと思う。
放課後の取り巻きを回避するために飼育委員を選んだって聞いた事がある。

「俺もちょっと…そもそも活動が少ないなんて理由だけで選ばれても」
里見が話しに加わる。
彼の名前は里見 隼人(さとみ はやと)短髪でキリッとした眉に高身長。
痛い所もついてくるが嫌味ではない。正義感が強めの良い奴。男らしくてカッコいいから女子から人気もある。

「先生が決めた事なんだから愚痴っても仕方ないだろう。どうせ僕達がやるって決まってるんだろうし。ね、先生そーなんですよね??」
個性的な反逆を試みるのは東 架(あずま かける)
理屈っぽそうに思えるけど、これは彼なりの遊び心で実は人懐っこいいい奴。
瑞穂や里見と比べたらアレだけど、東も結構モテている。見た目は迷子になった子犬に似てるから。
女子って犬とか猫、好きだよね。
東は子犬にしてはデカいんだけど

でもだからと言って僕達は特別仲が良いと言う訳では無い。
たまたま委員会が一緒だって言うだけの関係。
全員同じクラスになったのは意外だったけど。

「お前らグチばっかりだなぁ。
もっと前向きに考えられないのか?
これから高校に入ってくるキラキラ新1年生の学校ライフを楽しませてやるぞとか、お手本を見せてやるぞとか。
なあ……分かった!!お前らに救世主を授けてやる。
数多君、悪いけどコイツらと一緒にやってくれないか?生徒会長の君が一緒だったら大丈夫だ。なっ、頼むよ」

「えっ、僕ですか?!あーっ…………っそうですねぇ…
分かりました。では僕が表に立ってやります。
この生き物係達には裏方に回ってもらう。それでどうでしょうか?」
びっくりしながらも冷静に事を進めるのは生徒会長の数多 紬(あまた つむぎ)
一部の女子から超絶人気があるらしい。
頭が良くて顔も良くて面倒見が良いとなれば当然なのか?
「生き物係達って僕達の事?飼育委員なんですけどぉ」
瑞穂が小さく突っ込んだ。
その時
ぱちぱちぱちぱちぱちぱち
「 宜しくお願いします!」
他の生徒達が清々しい笑顔でこちらを向いている。
それって僕らに歓迎会の実行役を任せたって事なんだよね?