ずっと、ずっと

  すると斎川は手を離しゆっくりと立ち上がる。円城寺も立つと二人は向き合ってお互いを見つめた。
 斎川の少し潤んだ瞳と、円城寺の大きな瞳。視線が絡み合いゆっくりと体を近づけてそっと円城寺が背伸びをすると、斎川は少し屈んで円城寺の頬を両手でそっと包み込み、唇を重ねた。柔らかな感触に、斎川はジワジワと幸せを噛み締める。やっと、円城寺に想いを告げた。しかも、側にいることをこれからも許されるなんて……それだけで涙が出そうなほどだ。
「斎ちゃんだけのせいじゃないよな。僕も……試すようなことをしてごめん」
「いいんだ。俺だって、佑月が入って来なかったら、告白しないつもりだったから」
 それを聞き、円城寺は斎川の体を抱きしめる。その力の強さが、彼の想いを表していた。
「これからは、お互い思ってること話そ? もう恋人なんだから」
 それを聞き顔が熱くなる。円城寺は嬉しそうに笑顔をになり、顔を見つめてきた。
「これからもよろしくね、斎ちゃん……って名前で読んだ方がいいかな?」
 斎川は円城寺のふわふわの頭を撫でて少し口元を緩めた。
「ゆっくりでいいよ」
 友人から恋人へ。斎川はこれから訪れるであろう、円城寺との日々に想いを馳せた。

 それからしばらくして、斎川と円城寺は念願の電車デートに出かけた。切符を購入し、改札を抜けてホームで電車を待つ。ただそれだけなのに、円城寺にとっては新鮮だ。
 電車に乗ったことがないことを要が知ったとき『どれだけ箱入り息子なんだよ』と大笑いしていた。すると隣にいた佑月が手をつねって『冬留らしくていいじゃないか』と軽く要を睨む。最近はなぜかこのツーショットを見ることが多くなっていた。要は佑月に手を焼いているように見え、佑月はそれを楽しんでいるように思えた。斎川は不思議に思いつつも、円城寺の『初めて』に付き合えることが嬉しくてたまらない。
 やがて電車が入線し、四人がけの席に向かい合って座る。土曜日とは言え朝早い時間なので、人はまばらだ。やがて出発し、カタンコトンと心地よいリズムと風景にしばらく二人は車窓の眺めを堪能した。都会から緩やかに緑が多くなってきたころ、遠くにキラキラ輝く水面が見える。
「海だ」
 その景色をみていると、周りに人がいないことをいいことに円城寺がそっと斎川の手を握った。付き合うようになってからさらに甘えが上手くなっている気がする。それが斎川にとっては嬉しいことなのだが。
「いつか車で海岸線走ろ」
「運転手はどっち?」
「斎ちゃん。僕、運転出来ると思う?」
 ぶはっと二人は顔を見合わせて笑う。そして斎川がすっと小指を差し出した。
「じゃあ、約束」
「うん」
 指切りの約束を交わし、二人はまた視線を戻した。

 【了】