イケメン幽霊に溺愛されてます

「はあ、いいにお……って、あれ?」
 鼻腔をくすぐる魅惑的な香りにうっとりしていたが、流れてきた駅名のアナウンスで我に返る。
「どうした」
 頭上から降って来る声は、間違いなく陵のものだ。
 置いて帰るつもりが、なんやかんやしているうちに連れてきてしまっていた。
「陵君」
 俺はふと思いついて名前を呼ぶ。
「うん?」
「俺、次の駅で降りるから」
 嘘だった。本当は次の次の駅が家の最寄り駅だ。
 陵を突き飛ばすなり何なりして降ろしてしまい、一人で帰ろうと思った。
 が、陵はあっさりと言った。
「嘘だな」
「嘘なんかじゃ……」
「視線が泳いでる」
「うっ」
「それに、俺はしっ」
 陵が何か言いかけた時、駅に着いて一気に人が降りていく。
 また流されそうになったところを、陵が繋いだ手に力を込めて繋ぎ止めてくれていた。
 こういうところは優しい。
「何か言おうとした?」
「ううん。何でも。いつか麗音君が俺を好きになったら言う」
 ふんわりと優しい笑顔で俺を見る。
 否応なしに鼓動が高鳴った。
 顔が好きなせい。
 何度目かも分からないことを自分に言い聞かせながら、陵の視線から逃れるべく外に目向けた。