イケメン幽霊に溺愛されてます

 陵がいなくなってから気がついたことがある。
 一緒に過ごした時間は短かったのに、とても濃厚だったこと。
 いつの間にか俺の中で陵の存在がとてつもなく大きくなっていたこと。
「佐竹君?」
 水族館で、俺は水槽の中を泳ぐ魚を見つめながらぼんやりとする。
「佐竹君」
 肩を抱き寄せられ、漂う香りが日向の香りではなく、シトラスの香りであることに気がつくと、無意識のうちに隼人の胸を押していた。
「あ……ごめんなさい」
「……ううん」
 隼人もさすがに気がついているのだろう。特に気まずくなることもなく、そのまま俺の手を引いて次のエリアへと一緒に移動していく。
 陵。
 ごめん。
 でも俺は、陵とずっと一緒にはいられないことに気がついたから。
 どうか、天国で。
 ランチの最中、俺は食べ物をずっと見つめたまま、ぽつりと一筋の雫を落とす。
「佐竹君」
 隼人の手が伸びてきて、俺の頭を撫でる。
「先輩、俺、ごめんなさい」
「うん?」
「付き合ってなんて言ったけど、本当は、それを言いたかったのは」
「うん、こんな佐竹君を見たら、さすがに分かるよ。どうしたい?」
「………ごめんなさい」
 その言葉で分かったのだろう。隼人は頷くと、笑みを浮かべた。
「じゃあ、これからは友達になろう。辛かったら、話を聞くから」
「あり、がとうございます……」
 隼人はそれきり黙って、俺が泣き止むのを待っていてくれた。