イケメン幽霊に溺愛されてます

「佐竹君、俺さ……」
 俺は隼人が気恥ずかしそうに言い淀むのを遮るようにして、はっきりと告げた。
「久住先輩、俺と付き合ってください」
「……え?え?マジで?」
「はい」
 隼人は一瞬喜色を浮かべた後に、眉を顰める。
「先輩?」
「ああ、いや。何だか麗音君、表情が硬いなと」
「……気のせいですよ。俺も緊張しているだけです」
 笑顔を浮かべるように努めると、隼人はほっとしたようにそっか、と呟く。
「じゃあさ、次の休み空いてたらどこか行かない?」
「いいですね。俺、行きたい場所いろいろあって」
「あ、そうなんだ。じゃあ後でメッセージ送っといて」
「はい」
 俺が頷いて見せると、隼人は俺の頭をひと撫でして立ち去っていく。
 俺はその背を見送ることなく、空を見上げた。
「本当に、付き合うんだな」
 隼人が立ち去った後、いつの間にか背後に現れた陵がぽつりと言う。
 その声には深い絶望が込められているのを感じたけれど、気づかないふりをした。
「うん」
「ちょっとこっちに来い」
 強く腕を引っ張られる。たぶん、生きている人間に引っ張られるよりずっと強い力だ。
 でも強いと感じるのはそれだけじゃないとどこかでは分かっていて、俺は振り解こうにも振り解けなかった。
「ん、んぅ、んっ」
 俺は陵に激しく口づけられながら思う。
 こんなところを誰かに見られたら、一人で何やってるのかと思われるだろうな。
 とか。
 なんで俺は霊感が強いんだろうな。
 とかをつらつらと考えて、俺は自分の感覚をどこか遠くへ逃がすように努める。
 それに気づいた陵が、許さないというようにもっと口付けを深くしてきて、俺は耐えられなくなって陵の胸を押す。
「麗音君、俺」
 突き放された陵は、酷く辛そうで、今にも泣きだしそうな顔で俺を見る。
 俺は極力表情を消すように努めて、言い放った。
「もう、俺のところには来ないで」
「麗音君……っ」
「さようなら」
 陵が手を伸ばしてくる。
 俺はそれを振り切るように走って校舎の中へと戻った。
 陵は追って来ない。
 一人きりになって、深く息を吐き出す。
 自分の感情が凍てついていくのを感じる。
 これでいいんだ。
 自分に言い聞かせると、ゆっくりと歩き始めた。