ボッチな俺と王子様先輩の秘密のお弁当交換は愛が重過ぎた

「ハァァ、マジ大変だったわ」

明日で夏休みに入る今日この頃、俺は先生に頼まれて集めたノートを職員室に運びながらため息をつく。朝から本当に疲れた。

何で俺が疲れてるかって言うと、この前のお姫様抱っこ事件が原因だ。

クラスメイト達からは、

大原(おおはら)先輩とどう言う関係!?』

『下の名前で呼ばれてるってどう言う事!!?』

『お姫様抱っこされる関係って何!!?!?』

『マジで羨ましかったんですけど!!』

みたいな感じで、質問と羨ましいと言うお言葉を頂いた。

俺はそれに「あー、うん。えっとちょっと仲良い、って言うか」とか「関係って言われてもなぁ」としか言えない。
詳しく言えば、春夜(はるや)先輩に迷惑かけるし、まぁ、怪我の心配はされたからちょっと嬉しいから良かったけど。

怪我も無事とはいかないけど完治はしてるし、元気である事には変わらないが、やっぱり俺は注目されるのは嫌い、と言うか苦手だなぁ。

「失礼しました」

ノートを担任の机に置き終わって教室に戻ってる途中、前方向から、一軍女子先輩3人が現れた。楽しそうに話している姿が窺える。

アレは、春夜先輩達に話しかけてて惨敗?してる人達だ。俺みたいな陰キャは関わりなんて持たないし、そもそも相手先輩だし。

そう思いながら、壁沿いを体を小さく歩いて通り抜けた。

「(ふぅ、よし)」

一安心、とはいかず先輩の1人で真ん中で歩いて居たハーフアップ先輩のポケットからハンカチが落ちた。

それを見て俺固まっちゃったよね。一瞬にして頭の中で考えた。

ど、どうする!?拾って渡す!いや無理!人に話しかけるって、春夜先輩と家族以外無理!
話しかけられる方が嬉しいタイプだし!極力話すのは避けたいし!
で、でも、大切な物だったらどうしよう。あぁ、もう!

俺はすぐにハンカチを拾って、3人の先輩の元に駆け寄る。

「あの、先輩」

「ん?なーに?」

「これ落としましたよ」

「え?、、、、ぁ!ありがとう!これ2人からプレゼントされたハンカチだったんだ」

「ちょっと、大切なやつ落とさないでよ〜」

「そうだ〜、そうだ〜」

「ごめんってば!ありがとうね」

「いえいえ、たまたま落ちたのを見ただけなので」

ぁ、なんか、優しいって言うか話しやすい人達だな。
それに喜ばれると嬉しい。まぁ、真の一軍は神って言うのは本当って事か。

そりゃあ、春夜先輩も神だからそりゃあそうか、ってなったわ。

まっ、やる事やったし、俺はこれにて退散、退散。

「では、失礼します」

「ぁ、、うん、、、、!待って!(雪羽(ゆきは)の手首を掴む)」

「?、な、何ですか?」

え?何急に掴んで、それに少し大きな声出して。ちょっと廊下に響いたし。

2人の先輩も驚いてますけど!!?!?

って言えない俺は、臆病者で。
なんて思っていると、ハーフアップ先輩が俺の指に付いてる春夜先輩から貰った金製の指輪をマジマジと見つめている。
そんなに見つめられてると、恥ずかしいんですけど。
俺は見られてないけど。

「あの?先輩?」

「これ、大原君が付けてる指輪と同じやつだよね!?金製だけど」

「え、ぁ、、はい」

「私も持ってるんだ〜!(ネックレスにして付けている指輪を取り出す)君も買ったの?」

「(貰った、とは言えねーよな、うん)ぁ、はい。可愛いですよね、これ」

「って、ねぇ、この子ってこの前大原君がお姫様抱っこした子じゃない!!?」

「え?ぁ、本当だぁ〜!じゃあその時に憧れたとか!?」

「え、、、、ま、まぁ、そんな感じ、です」

なんか、変な感じに勘違いしてるっぽいなぁ。
指輪もどうやって手に入れた、とかじゃなくて買ったって勘違いしてくれて、お姫様抱っこされた奴なのに好き、じゃなくて憧れてるて勘違い。

うーん、都合が良い。
変に誤魔化さなくて良いし。うん。

先輩達は俺の返答を聞いてキャッキャしてる。

それにしても、何でこんな勘違い?好き?なはずだよね??

「先輩達はh(じゃなくて)、大原先輩達に良く話しかけてますけど、好き、何ですか?」

「好き、うん。好きよ、でも付き合いたいとは思ってない」

「え?」

「と言うか付き合えるとは思ってないよね」

「分かる!アタシ達みたいなタイプは絶対に好きにならないと思うし、憧れてる部分もあるから話せるだけで十分!」

「告白とかしたら?とか周りの子に言われるけど、振られるの分かってするのって馬鹿じゃん?それに、」

「「「私/アタシ達が彼女だって考えただけで鳥肌が立ったからねぇ」」」

「えぇ〜、、、、」

「だから、私達は今の関係で十分。大原君が幸せならそれで良い。だから、大原君が決めた相手なら私達は応援する!」

「そ、うなんですか」

何だが、予想とだいぶ違った答え、だったな。
納得がいかない、とかじゃない。なんか、漫画とかで見る恋を邪魔する系の一軍とは到底違う。

純粋に春夜先輩達を好いていて憧れているんだ、って分かった。
多分、先輩達は春夜先輩達の隣を歩くんじゃなくて、隣に立つ人も一緒に後ろから応援するんだろうな。

なーんか、全部俺と違う。
だからこの人達は一軍って言うか周りから好かれてるんだろうな。
怖いって感じてない、のかもしれない。

だいぶ俺の好感度も高い、けど、その分俺自身の好感度が低い気がする。今までの自分の言動を思い出すと汚いなぁ、アハハハハッ

「貴重なお話ありがとうございました。じゃあ、俺失礼しますね」

「ぁ、うん。貴重かどうかは分かんないけど。ぁ、名前教えてよ。私は倉持(くらもち)だよ」

「アタシは岩瀬(いわせ)だよ〜!」

「私は三藤(みとう)だよ」

「ぉ、俺は、小野雪羽(おのゆきは)です。では失礼します!先輩方!」

俺は自己紹介をして軽い会釈をしてから、3人の先輩方に背を向けて、その場から立ち去った。教室に戻る階段の足取りがいつもより軽い感じがする。
久しぶりに人に自己紹介した。春夜先輩以来かな。

でも、ちょっとだけスッキリした。人と話すのはまだまだ苦手だけど、倉持先輩達と話す時間は嫌じゃなかった。
ちゃんと芯のある先輩達の考え方を聞く時間は、成長?に繋がる感覚がした。

にしても、俺も俺で春夜先輩と付き合うなんて烏滸がましい考えを一瞬でもした事があるからなぁ、うん。馬鹿だなぁ。

俺だって春夜先輩の幸せを考えてるし、春夜先輩が幸せだと言うのであればそれを応援するし叶えてあげたい。

そう思うのだけは許して欲しいな。


「先輩、寝ないで下さい」

機嫌良く旧部活棟2階角部屋に行けば、ソファに寝っ転がる春夜先輩を発見。俺はいつも通りに声をかけて、テーブルにお弁当入れを置く。

「だって、疲れたんだよ。2時間連続体育は」

「先輩のクラス体育良くやってますけど、体育の呪いにでもかかってるんですか?」

「え゛、俺のクラス体育の呪いかけられてるの!?」

「知りませんよ。さっ、お弁当食べましょ」

「おう、、、、なんか雪羽機嫌良いな」

「え?そう、ですかね」

「うん。なんか、可愛い(頭を撫でて微笑む)」

「!(顔真っ赤にする)、そ、そうですか」

あぁやっぱりこの人はズルい。
一瞬で、怒りとか呆れとかをどうでも良くさせる。そのくせ人の好意には鈍感で、その好意を刺激するような事を平気でする。

人の喜ぶ事をしてきて、カッコいいって感情を心や脳に支配させてくる。

俺は一生この人を嫌いになれないし、勝てはしない。

この人、大原春夜を好きになった時点で、俺の負けは確定してるんだろうな。

「先輩って、いつか人から刺されそう」

「急な殺害予告辞めてよ、雪羽」