ボッチな俺と王子様先輩の秘密のお弁当交換は愛が重過ぎた



「ヤバっ、ジャージ忘れちゃた」

そろそろ夏休みに入る7月半ばのこと、体育の授業で体操服に着替えようとして体操服の入った袋を開けたら、いつも入れてるジャージを忘れてしまった俺。

極度とは言わないが寒がりな俺、基本的夏場でも長袖セーターで体操服もジャージ着用なのに、何で今日に限って忘れてんだ!!

ぁ、そうじゃん。洗濯したからって意気揚々と、勉強机に置いたまま入れて学校来たんじゃん。

「〈俺の自業自得って事か〉」

誰かに借りるなんて出来ないしそもそも夏場の体育でジャージなんて持って来てる人が居るとと思えんし、俺はそのまませめてもと思い、長ズボンを履いて体育館に向かう。

たまに肌に当たる風が俺にとっては冷たく、死んだ魚の目をしながら廊下を歩くのであった。

忘れたのは俺の自業自得だし、しょうがないけど。

でも、なんか虚しいなぁ。
なんて1人廊下を歩いて思って、1階に降りるとバッタリ体育終わりの春夜(はるや)先輩と遭遇。俺、思わず固まる。

1人じゃなくて、四天王先輩達も居るし。

ちょっと気まずい、かも。

雪羽(ゆきは)、今から体育?」

「は、はい。春夜先輩は終わったんですよね」

「うん。ぁ、真咲(まさき)達先行ってて」

「オッケー」

春夜先輩の言葉を聞いて、四天王先輩達は俺に手を振ってから、階段を上がって行った。
ちょっとだけ一安心。だけど、寒い。

「先輩達は何やったんですか?」

「俺達は、バトミントン。俺勝ったんだぜ」

「へぇ〜、凄いじゃないですか」

肌が出てる二の腕を触りながら春夜先輩と会話をする。
寒いけど、せっかくお昼休み以外で先輩と会えたんだ、我慢我慢。

だけど、俺の動作に気づいたのか、春夜先輩は徐に?合ってるよな?
徐に自分の腰に巻き付けてたジャージを解いて、俺の肩に掛けた。

その一連の動作に俺は目が点になってる。

先輩の上着が、俺の肩に??????

?????????

ダメだ、頭ん中では処理出来ん。

「え?あの、これって」

「寒いんだろ。使えよ」

「いや、でも」

「別に俺授業終わったし。それに、雪羽が辛そうにしてんの、見るの嫌だし。あと我慢するのも。これは先輩命令」

「、、、、分かり、ました(ジャージをギュッと握りしめる)」

いつになく強引だなぁ、とは思ったけど、俺からしたらラッキーこの上ないかもしれない。
だ、だって!好きな人のジャージを借りてるって事だろ?それに、それに、春夜先輩の匂いがして、良い匂い。
これが春夜先輩が使ってる柔軟剤の匂いかぁぁ。

とりあえず、今日は何があっても良いわ。うん、死んでも良い。

それだけが思える程、超良い。

って、体育館行かんと、授業始まるわ!早く行かなきゃ!

「先輩、絶対終わったら返すので、と言うか洗って返すので、、では、お昼休みにまた!」

「おぅ。体育頑張れ〜、、、、ふっ、可愛いなぁ、雪羽の奴」

これがあれば、今日は頑張れると言うかいつも以上の力が出せる!
春夜先輩の意思とか知らないから継げないけど、春夜先輩の名を持ったこのジャージがあれば、何でも出来る気がする!

ワクワクと春夜先輩のジャージに包まれてる感覚にドキドキしながら俺は体育館の中に入る。
だが、俺気づいた。そういや、1年生と2年生、それと3年生って体操服とかネクタイとかの色、学年ごとに違うって事を。
だから結果的に俺、

目立ったよねぇぇ。

「〈何で、小野(おの)が2年生のジャージ着てんの?〉」

「〈待って、あれ。大原(おおはら)って書かれてない?まさか大原春夜先輩の!?〉」

「〈嘘だろ!?絶対違うっての!他の人のだろ〉」

「〈でも、大原っ先輩他に居ないよな?!〉」

なーんて、、コソコソコソコソ陽キャ系クラスメイト達からの話し声に俺は段々と体を縮こまらせて、床を見つめて隅に立つ。
ぁー、失念してた。大原って苗字の先輩、春夜先輩以外居ないの忘れてたぁぁ。
と言うか俺の苗字知ってたのね!!!!!!

変な目で見られるのが結構恥ずかしいのと、何か言われるのかが嫌で、ビクビクしながら授業を受けた。
が、それが功を奏したのか、卓球で三連勝しちゃった。それで更に目立っちゃったよねぇ〜、アハッ、アハハハハハハッ(掠れた笑い)

「(とりあえず、影を薄くしよう)」

俺はその時そう決めた。だから授業が終わってもそのまま影を薄くして、教室に帰ったんだよ。

ちょっと暑いなぁって思いながら廊下を歩くけど、周りからの視線もないから平穏だなぁ、って思うけど日差し強いなぁ〜って顔上げるのもめんどくさいなって思ったりして廊下や階段を登ってた。
誰も見ないしさ。

だけど、3階の階段を登り終えた時、ズルって足が滑った。

そう滑っちゃった。
次に俺が見えたのはすこーし汚れて埃がついた天井だった。
わぁ、久しぶりの体が浮く感覚だよ。アハハハハハハッ

ドンッ

「ツ、、ぁ、ングッ、、、、あぁッ」

「キャー!!」

「おい!階段から人が落ちたぞ!」

ゴロゴロと階段を転げ落ち、ドンッと言う頭を打つ感覚に俺は、苦痛に悶えるが碌に言葉も発せず、意識朦朧になっちゃった。

頭が痛いなぁ、って思いながら周りの声が頭に響いてまた痛くなって、ぁ、ヤバっ、これ寝るわ。

薄目だから分かんない、けど、生徒が沢山俺、見てる。息、止まりそう。

「!、雪羽!」

先輩の声だ。気のせい、だろうか。
いや、この匂い、先輩だ。ハハッ、先輩だぁ、、、、

「先、ぱ、、i」














「んんっ、、、、んっ」

体が重い。それに、頭少しだけだけど痛いわぁ。
なんだろう、この天井見た事ない。白い、と言うか寝かされてる?体操服着たままだし。
ん?、誰か座ってる?、、、、!

「春夜、先輩」

「!、雪羽!起きたか!」

「此処って」

「病院だ。保健室連れてったけど、保険室の先生が救急車呼んで」

「そう言う、事ですか」

俺は体を起こして、深呼吸をする。
俺が起きたのを嬉しそうでホッとした顔をして、俺の顔を見る春夜先輩。今何時だろう、、、、ぁ、13時か。2時間目の授業終わりだから、2時間ぐらいしか気を失ってたのか。

それから先輩はナースコールを押してお医者さんが来て、打撲って事で、足も少し捻ってるけど今日帰れるから、「落ち着いたら帰ってね」だそうだ。
それを聞けて少し安心。

だけど、1つ気になった事があって、先輩に聞く。

「あの、何で先輩病院居るんですか?学校は?」

「早退した。救急車に乗る時俺が乗ったから。容体とかは俺が伝えて」

「え!マジですか?なんかごめんなさい」

「別に良いっての。と言うか、雪羽ちゃんとご飯食べてるか?軽過ぎたぞ」

「ちゃんと食べてますよ!、、、、ん?軽い?何で先輩そんな事知って」

「?、そりゃあ、保健室まで俺がお姫様抱っこして連れてったからな」

「はい!!?!?」

え〜、事件です。NEWSです。

お姫様抱っこ?お姫様抱っこ、、、、春夜先輩に。何で意識なかったのかなぁ、俺!いや、先輩からしたら後輩を運ぶ為にやってくれてる訳で!
ツッコめば不思議に思われるけど!

だって見てよ!俺の方を見てる春夜先輩、それがどうかしたか?、みたいな優しい顔してるんだぞ!
何も言えねーよ!!

あと病室でうるさくしちゃった!あとで謝んなきゃ!

その代わり布団を握り締めて、顔を俯き落ち着く為にまた深呼吸をすると、新たな事実に気付いちゃった俺。

「アレ?と言う事は、俺がお姫様抱っこされてる姿を他の生徒に見られて、ます?」

「あぁ、50人ぐらいには?」

「終わった。俺の学校生活終わりました、先輩」

「何でだ?」

「自分の立場を考えて下s グゥゥゥゥゥ、、、ぁ、」

最後まで言い終わる前に、俺のお腹が鳴った。
そう言えば俺体動かした後に意識失ったもんなぁ。そりゃあお腹空いてるか。
にしても先輩の前で鳴る事はないじゃん!!今の俺顔真っ赤だよ!

ほら見ろよ!先輩笑ってんぞ!

「すみません」

「何で謝るんだよ。お腹俺も空いてるし、帰る前に一緒に食べるか?」

「え?先輩食べてなかったんですか?」

「当たり前だろ?つか、俺は雪羽の弁当食べたいんだし、俺
の弁当も雪羽に食べて貰いたいんだよ」

「、、、、そうですね(ハァァ、本当この人には敵わないなぁ)」

「んじゃ、食べるか」

「はい。そうしましょう」

それから俺と先輩はお弁当を食べた。いつもとは違う場所だけど、ちょっと新鮮で楽しかった。

まぁ病室って言う時点で新鮮も何もないんだろうけど。

少し遅めのお昼ご飯もいつも通り美味しくて、春夜先輩の美味しそうに食べてる姿がとっても愛おしくて、怪我の痛みなんて忘れるぐらいだ。

まぁ、強いて文句を言うのであれば、俺の醜態を見られた事とお姫様抱っこを見られた事かな。

学校行きたくないけど先輩が居るから行くんだけど。

なんか、俺の恋心弄ばれてる気がする。神様に。

なんて悶々としながら卵焼きを食べていると、春夜先輩がスッと俺の顔に手を差し出して来た。
ビックリしちゃって目を瞑っちゃった。だって下落川近かったから!

「取れた」

「?、取れた?」

「米粒。気付かなかったのかよ。(笑ってから米粒を口に含む)」

「!、(顔を真っ赤にする)、、、、先輩って、絶対無自覚で人を惚れさせてる」

「???無自覚って言われてもなぁ、分かんないっての」

「そう言うところですよ。先輩」

「???」

ハァァ、先輩って本当にズルい。

だけど、そう言う所が好き。大好きだ。
多分俺はどんな事をされてもこの人の事を好きで居続けるんだろうな、って思う。

と言うか俺は全然先輩の前でカッコいい事出来てない。
多分先輩は俺の事なんて可愛い後輩としか思ってないだろうな。付き合えなくても良いけど、カッコいい姿は見て欲しいなぁ。

まぁ、俺の性格上できないとは思うけど。

「んっ、先輩、このおにぎり甘いです」

「え?マジ???、、、、間違えて砂糖入れちゃったかも」

「あるあるですから大丈夫ですよ。それに鮭の塩っぱさと相待って美味しいですから」

「それなら良かった。料理って調味料が違ったら味全然違うもんな」

「ですね。理科の実験も同じですよね。入れる内容で結果は変わるし、悪い方向にも良い方向にも」

「あ!確かに!そう考えると面白いかも。実験かぁ、、雪羽良い事言うな笑」

「!、そうですかね(あぁカッコいいし可愛い)」

ドッキンドッキン心臓の音がうるさい。
春夜先輩の笑顔を見るたびに俺の表情筋がゆるっゆるになってしまう。それを一切悟られてないのは俺の演技力が高いのか、春夜先輩が馬k、ゲフンゲフン、鈍感なのか、分からない。

でもまぁ、2人だけで過ごせる時間は俺は好きだし、大切だと思う。それは多分、春夜先輩も同じなんだと思うだけで、幸せなんだよね。