ボッチな俺と王子様先輩の秘密のお弁当交換は愛が重過ぎた

宗輔(そうすけ)達にモデルをしていた事がバレる2週間前の事。
最近、春夜(はるや)先輩の様子がおかしい。
いつもの部屋に行くと直前までスマホを触っている事が多いし、欲しい物はないかって聞かれる事が増えたし、そして何よりも何よりも怪しいって思ったのはアレだ。

ジーッッ

「、、、、(何で部活してる俺見てんだろ、先輩)」

昼休み以外での春夜先輩からの視線だ。話しかける事はせず、ただ観察している。
気味が悪いとかそう言う部類じゃなくてただただ気になるのだ。話しかけようと思っても気付いたら姿がないし実害はないし迷惑だとも思ってないのでどうしようもない。

まぁ気になる点を挙げるとするのであれば、春夜先輩がバイトを始めたと言う事だ。

その事は真咲(まさき)先輩経由で教えて貰って、近くのケーキ屋さんだそうだ。何でバイトを始めたのかって言うのは見当は付かないし、バイト先もまだ知らない。

「うーん、俺、何かした、訳ではないよな。じゃあ何でだ?」

1人自宅で夜ご飯の準備をしながら、春夜先輩の奇行の正体を考える。

聞いた所で誤魔化されるんだろうなって思うしそう言う雰囲気を出して居るせいで、碌に聞けないし。何を考えているのかえ分かんないのが悔しい。

何て考えていたらスマホに着信があった。手に取るとパパからだった。

[雪羽(ゆきは)ごめん、来月末まで家には帰れない。ママも同じ]

「、、、、わざわざ連絡してこなくても良いのに。繁忙期だって分かってるのに、律儀だなぁ笑」

[大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね]とパパに返信をした。この時期は繁忙期だから碌に帰って来れない事ぐらい承知しているし慣れているんだけど、両親は少しでも時間があれば俺に連絡をしてくれるからそこは嬉しい。

仕事を頑張ってる両親が好きだから、俺はこの生活に何の不満もない。寧ろ自由に家の事が出来るからなんて事もない。

夜ご飯を食べながらふと、暇な俺だから出来る事があるんだと気づいた。

「ぁ、そっか。春夜先輩のバイト先突き止めるよう、そして聞こう」

あの変な所で横着な春夜先でもいくらバイト先を突き止められて質問をされれば追い返すとか黙る事は出来ないだろう。

よし、そうと決まれば春夜先輩の家の近くのケーキ屋さんや市内や市外でも近いケーキ屋さんを調べた。今の時代はスマホって言う便利な物があって本当に良かったなって思う。

「暇で良かったな、俺本当に」

その日から時間のある時や春夜先輩の家に行かない日の放課後はケーキ屋さん奔走を勤しんだ。
まぁ、買い物とか部活もあるから使える時間も限られたりもしたけどね。







「うーん、居ない、か」

ケーキ屋さん探しをして早2週間、全く突き止められてない。5件目のお店の中を覗いて春夜先輩の姿はないので、申し訳ないのでプリンを買う。
先輩宅の近くのケーキ屋さんも学校近くのケーキ屋さんも市内にあるケーキ屋さんは全部当てが外れた。

どうして、どうして何だ!
って思いながらも、どうすれば良いんだ、と悩んでしまう。

だが、家に帰ってお風呂を上がってソファに座りプリンを食べながらスマホで検索をしていた時、冷静になった俺は自分の一連の行動を思い返して気付いた。

「あれ?これストーカーじゃね???」

と。
だって好きな人が何やっているか、とか好きな人の勤め先を突き止めようとしているとか完全にストーカーがやっている事だよ、完全に!

自分のやっている事を客観視した事で自分のやっている事がキモ過ぎると気付いて、これ以上は馬鹿な事は辞めよう。

それに何だ、春夜先輩が何やっているとか別にどうだって良い事じゃん!!うん!もしバレたら絶対キモがられる。俺はそう思ってその日以降ケーキ屋さん探しを一切やらなくなった。

嫌われたくなんてないし。嫌われたら死のみ」

そう決意してから数日後の10月5日の日、俺は突然春夜先輩から先輩宅に呼び出された。
最初はいつも通りの料理を作りに来てって言う連絡かと思ったがそう言う訳ではないっぽい。

玄関を開けて、リビング扉を開けると、パンッと言う何かが弾ける音がして俺は思わず耳を瞑る。
だけどそれ以上の事は起こらなくて恐る恐る目を開けると、綺麗に飾り付けをされてhappy birthdayと壁に付けられた風船と美味しそうな料理の数々が視界に映った。

そして、クラッカーを手にしていた春夜先輩は明るく大きな声で俺に対して言った。

「誕生日おめでとう!雪羽!」

「え、、、、」

その言葉を聞いて思考回路が一旦停止してしまった。

だがそこで俺は思い出した。そう言えば今日俺の誕生日だったと。春夜先輩の事を考え過ぎて自分自身の誕生日を忘れているなんて恥ずかしい。

だけど、それ以上それ以上に先輩に祝われた事が嬉しい。

部屋の中に入って驚いた表情をして俺は問いかける。

「あの、これもしかして1人で準備を?」

「勿論。その感じ忘れてたなぁ〜?」

「ウグッ、、、、はい。と言うか俺春夜先輩に誕生日言いましたっけ?」

「、、、、言ってた、言ってた(目を泳がせる)」

「先輩?こっちを見て?」

少し怪しい感じを出すが、まぁ良いでしょう。
それにしても料理も全部作ったんだろうけど、本当に凄い。飾り付けまで1人でしたとは、ここまでされると逆に申し訳ない方が勝ってしまう。

椅子まで誘導されて座らされた。なんか色々動揺しちゃってる。

だけど俺は気づいた事がある。もしかしてバイトの話って、と。

「バイトしてるって真咲先輩から聞いたんですけど」

「ぁー、うんしてる。和菓子屋でね」

「和菓子屋!!?!?俺、真咲先輩からはケーキ屋って言われたんですけど!?」

「誤魔化しておいてって言ったから」

だから、いくらケーキ屋さん探しても見つからない訳だ。そもそも探している店自体が違ったんだから。クソッ、無駄足だった。けど、アレ以上やってたら真のストーカーに進化する所だったから良かったのかもしれない。

俺は一旦真咲先輩を恨んだ。恨んだ所で何にもならないとは分かっているが。

ジュースをコップに入れて貰いながら俺は聞いてみる事にした。

「俺の誕生日の為に、ですか?」

「あぁ、誕生日プレゼント贈ろうと思って、わざわざバイトをしてみた。これが大変でな、まぁ欠員目的で新しくバイトも入ったから辞めたがな」

「え!?俺の為だけにバイトして辞めたんですか!!?!?本当、も、申し訳ない。俺なんかの為に」

「俺なんかのじゃない。俺がやりたくてやったんだよ。俺が祝いたいから、感謝を伝えたいから、、、、それ以上は言わないで」

瓶を少し力を込めてテーブルに起き、真顔でだけど真っ直ぐな表情で言った。
それを見て俺は何も言えなかった。怒ってる様な感情ではないのは分かった。

そうだよな、ってすぐに納得をした。俺の為にやった努力を俺に否定なんてされたくないもんな。

自分の非を認めて小さく「ごめんなさい」って言うと春夜先輩は何も言わず、頷いて席に着いた。その表情はさっきまでとはうって違って優しい表情だった。

俺はホッと安心して食事を始める。
少ししたらいつも通りの穏やかな雰囲気に戻った。

「先輩の家ってもしかして誕生日の時に必ずカレーが出てた家ですか?」

「え?何で分かったの?母さんが作ってくれてた」

「やっぱり。明らかに洋風の料理の中にカレーって言うインパクトを考えればそうかなって」

言葉にはしないが結構感動している俺は、こうやってちょっと斜め上な会話をする事で平常心を保とうとしている。

あの一切料理が出来なくて卵を温めたら固まる事さえ知らなかった、あの料理音痴な先輩がここまで成長するなんて、俺今大学に入っていつの間にか家事が出来る様になった息子を持つお母さんの気持ちを味わってる感じ!

お母さん嬉しい!ここまで成長してくれて!

と、頭ん中でのおふざけはここまでしておいて。

こうやってお祝いされる事自体も殆どなくて自分の誕生日すら忘れてて、大好きな人に、好きな人にお祝いされる事がこんなにも嬉しいんだって分かると心がキューッとなる。

「先輩」

「ん?」

「ありがとうございます!」

「、、、、どういたしまして(微笑む)」

料理を全部完食してから、ケーキを食べている時、テーブルにラッピングがされた箱を置く春夜先輩。それを見てプレゼントだと咄嗟に察した俺はフォークをお皿の上に置いて「ありがとうございます」と言ってから手に取った。

それを見てニコニコしながら開けるのを見ている先輩の姿に笑みが溢れそうになったが、なんとか我慢した。

綺麗に崩さない様にラッピングをとって、箱を開けると中に入ってたのはブレスレットだった。それもタッチブレスレットだった。
タッチすれば相手に振動が伝わるやつ。めっちゃ高いはずなのに。

バッと顔を上げると、利き手の左手の手首を出す春夜先輩。そのには色違いのタッチブレスレットが付けられていた。先輩のが太陽のイラストが描かれていた。

「これって」

「これがあれば連絡しなくても分かるし良いかなって」

「高かったですよね!?」

「全然これぐらい平気。それに、、、、なんか年下にプレゼンをするってのが初めてだからこれで良いのかって不安がある」

自信なさげに言ってタッチブレスレットをさする春夜先輩。

それを見てハッとする。先輩も不安なんだって、喜んで貰えるか不安なんだって気付いた。
そんな事気にしなくたって俺は貴方にして貰う事全てが嬉しいんです。

って素直に言える訳もなく、俺は春夜先輩の顔を見て一言。

「とっても嬉しいです!」

「、、、、良かった(ホッとした表情をする)」

箱からタッチブレスレットを取り出して春夜先輩に俺の利き手の右手首に付けて貰った。付けている時に俺はある事に気付いたって言うかSNSの投稿を思い出した。

つい、その時思った事をポロッと口に出てしまった。それが春夜先輩の耳に普通に届いたし。

「でもこれって普通はカップルとかが付けてるイメージ、、、、」

「、、、、まぁ、仲の良い友人でも付けてる奴は居るから、大丈夫だろ」

「、、、、それもそうですね。友人と言えば今日は真咲先輩達は?」

「真咲達か、俺も誘ったんだけど全員用事があるらしくてなんか」

「なんか?」

「「ゆっくり楽しめよ」って言われた。あと4人からのプレゼントはあそこにあるから」

その言葉を聞いて一瞬、一瞬だけど春夜先輩の後ろからグッドポーズをする四天王先輩達の姿が見えた気がした。

そして嵌められた、と言うか無理に2人っきりにしやがったな、とこの時気付いた。今度講義しようと俺は決意して、ケーキを口に含んだ。

自然とムッとしちゃうから足組んじゃうもんね。

「それにしてもプレゼント選びって本当に大変だった。雪羽のプレゼントを考える為に雪羽気付いてなかっただろうけど、観察して調べて」

「、、、、(気付いてたんだよなぁ)」

まさかの気付かれてないと思っていた事に、今日1番の驚きだった。普通あんな分かりやすい視線に気づかない奴が居ると思うか?と心の中で考えるが、多分春夜先輩は気付かないタイプなんだと察し、言葉にするのを辞めた。

去年の様に1人で祝う誕生日じゃなくて、好きな人に祝われる誕生日がこんなにも幸せで、心が温かくなるなんて思わなかったな。

春夜先輩との関わりが深くなるたびに好きって気持ちが大きくなると感じる。

「今日泊まって行ったら?もう夜遅いし」

「ぁ、はい。じゃあそうします」

お風呂を上がって洗面台でドライヤーを使って髪を乾かしているとスマホに通知が入った。ドライヤーの電源を切って、スマホを手に取ってL○NEを開けるとパパとママからだった。それも3人のグループLI○Eで。

俺はすぐに開いてメッセージを確認した。

そこに書かれていた言葉に心が温かくなったし、やっぱりこの2人の子供で良かったと思えた。

[お誕生日おめでとう雪羽。繁忙期が終わったらパパとママと色々しよう]

[お誕生日おめでとう、雪羽。お仕事忙しくてごめんね。終わったら私とパパと好きな事しようね]

[したい事があったら教えてくれ。焼肉屋さんも行こうな]

[パパが焼肉屋さん連れて行ってくれるから好きな服でも買ってあげる]

と、交互に送ってくる辺りが夫婦だなって、俺のツボに刺さって笑みが溢れて壁に寄りかかる。
[楽しみにしてる。お仕事がんばってね、パパ、ママ][産んでくれてありがとう]俺はそう送って、スマホを閉じた。

今年の誕生日はいつもより幸せだって感じた。好きな人に祝われる事もだけど家族に祝われる事も俺は大好きで、幸せなんだって感じた日になった。

気分がウキウキな状態で俺は就寝したのであった。
途中、春夜先輩の寝顔で覚醒状態になりかけたのが5回ぐらいあるけど。
アレはずるいって、マジ。ガチで、、、、この顔面国宝め。心臓が持たない。