■第三階層
空気が、変わった。
ここまでの階層とは違い、湿り気は完全に消えている。
乾いた空気が喉をかすかに刺し、吸い込むたびに肺の奥が冷たくなる。
足元の石床はひび割れ、細かな砂が積もっていた。
踏み出すたび、シャリ…と乾いた音が静寂の中に響く。
壁面は風化し、削れた跡が幾重にも走っている。
長い年月、風だけが通り抜けてきたような空間だった。
……静かだ。
自分の足音だけが、やけに大きく反響する。
その時――
シャリ……
砂を踏む音。
影が揺れる。
現れたのは――
コボルト。
犬に似た頭部。
濁った黄色の目。
擦り切れた革鎧。
手には欠けた短槍。
乾いた喉の奥から低い唸り声を漏らし、こちらを睨み据えている。
(ゴブリンより統率が取れている……群れる習性あり、か)
俺は静かに息を整え、魔力を巡らせた。
「鑑定」
淡い光が視界に重なり、情報が浮かび上がる。
――コボルト
――敏捷性:高
――防御:低
――弱点:首筋、脇腹、喉元
(急所は明確だな)
一体が砂を蹴り、一直線に突進してくる。
速い。
短槍が胸元を狙う。
俺は身体強化を発動させた。
魔力が筋肉へ流れ込み、身体の内側から力が膨れ上がる。
世界がわずかに遅くなる。
踏み込み、回避。
死角へ滑り込む。
短剣を振り抜く。
首筋へ――
血が流れるが傷は浅い。
致命傷には届かない。
コボルトは唸り声を上げて振り向き、反撃に転じる。
(やはり刃の通りが鈍い……)
距離を取る。
「ファイアボール」
火球が命中。
爆ぜる炎が乾いた空気を揺らし、焦げた毛皮の匂いが広がる。
しかし――
コボルトは倒れない。
煙を上げながらなお牙を剥く。
(威力が足りない)
側面から二体目。
跳躍。
身体強化を維持。
踏み込み。
脇腹へ斬撃。
浅い。
だが動きは鈍る。
砂埃が舞い、視界が揺れる。
(三体同時は厄介だな)
その瞬間、脳裏に新たな術式の感覚が蘇る。
先ほどの戦闘で到達したレベル上昇。
そして取得した新魔法。
(試すか)
迫る三体。
右手を前へ突き出す。
魔力を一点へ収束。
熱が凝縮し、槍の形を成す。
「――フレイムランス」
炎の槍が形成される。
放つ。
轟音。
紅蓮の閃光が一直線に走る。
一体目の胸部を貫通。
内部から爆ぜ、肉体が弾け飛ぶ。
残る二体が怯む。
追撃。
二射目。
三射目。
炎槍が空間を焼き裂き、コボルトたちを貫いた。
爆炎。
焦げた匂い。
舞い上がる灰と砂。
そして――
霧となって消滅。
剣術と魔術がレベルUPした!
静寂が戻る。
乾いた空気の中、砂がゆっくりと床へ落ちていく。
俺は静かに息を吐いた。
(ファイアボールでは決定力に欠ける)
(フレイムランス……実戦で十分通用する)
掌に残る熱を感じながら、周囲の気配を探る。
第三階層。
乾ききったこの空間の奥に、まだ敵の気配が潜んでいる。
だが――
確実に、俺は強くなっている。
空気が、変わった。
ここまでの階層とは違い、湿り気は完全に消えている。
乾いた空気が喉をかすかに刺し、吸い込むたびに肺の奥が冷たくなる。
足元の石床はひび割れ、細かな砂が積もっていた。
踏み出すたび、シャリ…と乾いた音が静寂の中に響く。
壁面は風化し、削れた跡が幾重にも走っている。
長い年月、風だけが通り抜けてきたような空間だった。
……静かだ。
自分の足音だけが、やけに大きく反響する。
その時――
シャリ……
砂を踏む音。
影が揺れる。
現れたのは――
コボルト。
犬に似た頭部。
濁った黄色の目。
擦り切れた革鎧。
手には欠けた短槍。
乾いた喉の奥から低い唸り声を漏らし、こちらを睨み据えている。
(ゴブリンより統率が取れている……群れる習性あり、か)
俺は静かに息を整え、魔力を巡らせた。
「鑑定」
淡い光が視界に重なり、情報が浮かび上がる。
――コボルト
――敏捷性:高
――防御:低
――弱点:首筋、脇腹、喉元
(急所は明確だな)
一体が砂を蹴り、一直線に突進してくる。
速い。
短槍が胸元を狙う。
俺は身体強化を発動させた。
魔力が筋肉へ流れ込み、身体の内側から力が膨れ上がる。
世界がわずかに遅くなる。
踏み込み、回避。
死角へ滑り込む。
短剣を振り抜く。
首筋へ――
血が流れるが傷は浅い。
致命傷には届かない。
コボルトは唸り声を上げて振り向き、反撃に転じる。
(やはり刃の通りが鈍い……)
距離を取る。
「ファイアボール」
火球が命中。
爆ぜる炎が乾いた空気を揺らし、焦げた毛皮の匂いが広がる。
しかし――
コボルトは倒れない。
煙を上げながらなお牙を剥く。
(威力が足りない)
側面から二体目。
跳躍。
身体強化を維持。
踏み込み。
脇腹へ斬撃。
浅い。
だが動きは鈍る。
砂埃が舞い、視界が揺れる。
(三体同時は厄介だな)
その瞬間、脳裏に新たな術式の感覚が蘇る。
先ほどの戦闘で到達したレベル上昇。
そして取得した新魔法。
(試すか)
迫る三体。
右手を前へ突き出す。
魔力を一点へ収束。
熱が凝縮し、槍の形を成す。
「――フレイムランス」
炎の槍が形成される。
放つ。
轟音。
紅蓮の閃光が一直線に走る。
一体目の胸部を貫通。
内部から爆ぜ、肉体が弾け飛ぶ。
残る二体が怯む。
追撃。
二射目。
三射目。
炎槍が空間を焼き裂き、コボルトたちを貫いた。
爆炎。
焦げた匂い。
舞い上がる灰と砂。
そして――
霧となって消滅。
剣術と魔術がレベルUPした!
静寂が戻る。
乾いた空気の中、砂がゆっくりと床へ落ちていく。
俺は静かに息を吐いた。
(ファイアボールでは決定力に欠ける)
(フレイムランス……実戦で十分通用する)
掌に残る熱を感じながら、周囲の気配を探る。
第三階層。
乾ききったこの空間の奥に、まだ敵の気配が潜んでいる。
だが――
確実に、俺は強くなっている。

