■第二階層
石の階段を下りた瞬間、空気の質が変わった。
ひんやりとした湿気。
肺にまとわりつくような重たい気配。
第一階層よりも明らかに密度の高い空気。
通路は途切れ、空間が大きく開ける。
等間隔に並ぶ石柱。
侵食された表面。
崩れかけた柱が長い年月を物語る。
天井は低く、圧迫感がある。
柱の影が幾重にも重なり、死角が多い。
(奇襲に適した構造だな)
足音を殺し、呼吸を浅く保つ。
耳を澄ませると、石を擦る鈍い音。
次の瞬間――
柱の陰から影が躍り出た。
ホブゴブリン。
第一階層の個体より一回り大きい。
筋肉の膨らんだ腕。
粗末な革鎧。
手に握られた棍棒。
低い唸り声と共に距離を詰めてくる。
速い。
棍棒が振り上げられる。
振り下ろされる。
ガンッ!!
衝撃が腕を貫いた。
短剣で受けた瞬間、骨まで震える重さが伝わる。
(重い……!)
押し返せない。
ならば――流す。
衝撃の軌道を逸らし、力を逃がす。
だが敵は間髪入れず、二撃目を振り上げた。
(このままでは押し切られる)
その瞬間、前世の戦場の記憶が蘇る。
魔力不足を補うために編み出した補助術式。
身体能力を一時的に底上げする基礎強化魔法。
だが――
(この体で実戦使用は初めてだ)
一瞬の逡巡。
振り下ろされる棍棒。
迷っている暇はない。
歯を食いしばる。
「――身体強化」
体内の魔力を筋肉と神経へ流し込む。
魔力回路を薄く広く展開。
過負荷を避け、出力を均等分配。
次の瞬間――
世界の速度がわずかに落ちた。
視界が鮮明になる。
敵の動きが遅く見える。
足が軽い。
腕が、先ほどよりも自然に動く。
振り下ろされた棍棒を半歩で回避。
石床が砕ける音。
踏み込む。
足払い。
ホブゴブリンの軸足を払う。
巨体が揺らぐ。
(動ける……!)
体勢が崩れた瞬間、
掌を突き出す。
至近距離。
「ファイアボール」
圧縮した火球が爆ぜた。
爆炎が胸部を包む。
至近距離の衝撃に敵がよろめく。
焦げた革鎧から煙が上がる。
咆哮。
だが反撃の体勢には戻れない。
強化された脚力で間合いを詰める。
逆手に持ち替えた短剣を――
喉元へ滑らせる。
抵抗は一瞬。
巨体は崩れ落ち、
黒い霧となって消滅した。
静寂。
埃がゆっくりと舞い落ちる。
俺はその場で動きを止めた。
身体強化を解除する。
途端に筋肉が重く感じられた。
(持続時間は短いが……効果は十分)
軽く拳を握る。
まだ微かに熱が残っている。
初めてこの身体で使った強化魔法。
成功だ。
魔力消費は想定より少ない。
負荷も制御範囲内。
(近接戦闘の選択肢が広がったな)
魔術の出力不足は変わらない。
だが、
補助魔法と体術を組み合わせれば、
戦い方はいくらでもある。
ハルト「ん?何だこれは?」
3体目を倒した時に石のようなものがでた。
それを手に取った瞬間頭に直接何かが流れ込み一瞬ズキッとした。
どうやら俺はスキル「鑑定」を得たらしい。
なら!自分自身の鑑定!
はできないらしい、残念無念また来年……とまでは流石にいかない。
それは置いておいて
視線を巡らせる。
柱の影。
崩れた壁面。
低い天井の暗がり。
この階層はまだ終わらない。
重たい空気の中、俺は静かに次の一歩を踏み出した。
石の階段を下りた瞬間、空気の質が変わった。
ひんやりとした湿気。
肺にまとわりつくような重たい気配。
第一階層よりも明らかに密度の高い空気。
通路は途切れ、空間が大きく開ける。
等間隔に並ぶ石柱。
侵食された表面。
崩れかけた柱が長い年月を物語る。
天井は低く、圧迫感がある。
柱の影が幾重にも重なり、死角が多い。
(奇襲に適した構造だな)
足音を殺し、呼吸を浅く保つ。
耳を澄ませると、石を擦る鈍い音。
次の瞬間――
柱の陰から影が躍り出た。
ホブゴブリン。
第一階層の個体より一回り大きい。
筋肉の膨らんだ腕。
粗末な革鎧。
手に握られた棍棒。
低い唸り声と共に距離を詰めてくる。
速い。
棍棒が振り上げられる。
振り下ろされる。
ガンッ!!
衝撃が腕を貫いた。
短剣で受けた瞬間、骨まで震える重さが伝わる。
(重い……!)
押し返せない。
ならば――流す。
衝撃の軌道を逸らし、力を逃がす。
だが敵は間髪入れず、二撃目を振り上げた。
(このままでは押し切られる)
その瞬間、前世の戦場の記憶が蘇る。
魔力不足を補うために編み出した補助術式。
身体能力を一時的に底上げする基礎強化魔法。
だが――
(この体で実戦使用は初めてだ)
一瞬の逡巡。
振り下ろされる棍棒。
迷っている暇はない。
歯を食いしばる。
「――身体強化」
体内の魔力を筋肉と神経へ流し込む。
魔力回路を薄く広く展開。
過負荷を避け、出力を均等分配。
次の瞬間――
世界の速度がわずかに落ちた。
視界が鮮明になる。
敵の動きが遅く見える。
足が軽い。
腕が、先ほどよりも自然に動く。
振り下ろされた棍棒を半歩で回避。
石床が砕ける音。
踏み込む。
足払い。
ホブゴブリンの軸足を払う。
巨体が揺らぐ。
(動ける……!)
体勢が崩れた瞬間、
掌を突き出す。
至近距離。
「ファイアボール」
圧縮した火球が爆ぜた。
爆炎が胸部を包む。
至近距離の衝撃に敵がよろめく。
焦げた革鎧から煙が上がる。
咆哮。
だが反撃の体勢には戻れない。
強化された脚力で間合いを詰める。
逆手に持ち替えた短剣を――
喉元へ滑らせる。
抵抗は一瞬。
巨体は崩れ落ち、
黒い霧となって消滅した。
静寂。
埃がゆっくりと舞い落ちる。
俺はその場で動きを止めた。
身体強化を解除する。
途端に筋肉が重く感じられた。
(持続時間は短いが……効果は十分)
軽く拳を握る。
まだ微かに熱が残っている。
初めてこの身体で使った強化魔法。
成功だ。
魔力消費は想定より少ない。
負荷も制御範囲内。
(近接戦闘の選択肢が広がったな)
魔術の出力不足は変わらない。
だが、
補助魔法と体術を組み合わせれば、
戦い方はいくらでもある。
ハルト「ん?何だこれは?」
3体目を倒した時に石のようなものがでた。
それを手に取った瞬間頭に直接何かが流れ込み一瞬ズキッとした。
どうやら俺はスキル「鑑定」を得たらしい。
なら!自分自身の鑑定!
はできないらしい、残念無念また来年……とまでは流石にいかない。
それは置いておいて
視線を巡らせる。
柱の影。
崩れた壁面。
低い天井の暗がり。
この階層はまだ終わらない。
重たい空気の中、俺は静かに次の一歩を踏み出した。

