書斎の扉を閉め、二人だけになると、澄乃はゆっくりと口を開いた。
「旦那様、静花様の薬について、申し上げたいことがございます。ただ、これは私の見立てであって、確定的なことは申せません。まずそれをご承知おきください」
「わかった、聞かせてくれ」
颯介の目が鋭くなるのを見て、澄乃は一度息を整えてから言った。
「先ほどお薬を拝見しましたが、処方の内容が、静花様の症状と合っていないように思われます」
「どういうことだ」
「静花様のご症状を伺うと、体の冷え、倦怠感、食欲の低下、手足の痺れ、頭痛——これらは全て、脾胃の弱りと気血の不足から来るものと考えられます。本来ならば、気を補い、血の巡りを助ける薬が必要なはずです」
「しかし、柴田先生は……」
「柴田先生がどのようにお考えかは存じません。ただ、今の薬に含まれている成分の一つは、強い利尿作用を持ちます。体から水分を大量に排出させる性質のものです。体が弱い方、特に血気が不足している方には、むしろ症状を悪化させるものです」
澄乃はさらに続けた。
「また、別の薬に含まれているものは、少量なら問題ないのですが、長期にわたって服用した場合、消化器に負担をかける可能性があります。食欲不振や吐き気の原因になりうる成分です」
「……つまり、静花の薬は、効いていないどころか、悪化させている、ということか」
「断言はできません。あくまで私の見立てです。ただ……その可能性が高いと、私は思います」
沈黙が落ちた。
颯介は立ち上がり、窓の外を見ると、しばらく動かなかった。
「柴田という医者は、信頼できる人物か、確認が必要だな」
と颯介はやがて言った。
「お前に頼みがある。静花に合う薬を、調合してもらえるか。今すぐ飲ませてやりたい」
「はい。すぐに準備します」
澄乃が静花のために調合した薬は、四君子湯を基にしたもの。
脾胃の機能を回復させ、気力を補う薬方である。
それに体の冷えを和らげる当帰と、血の巡りを助ける生薬を加えた。
静花は薬を見て顔をしかめた。
「こんなもの、飲んでも意味があるの?柴田先生に失礼でしょう」
「静花。頼むから、一度だけ、飲んでみてくれ」
静花は颯介の顔を見て、いやいやながら薬を飲んだ。
「旦那様、静花様の薬について、申し上げたいことがございます。ただ、これは私の見立てであって、確定的なことは申せません。まずそれをご承知おきください」
「わかった、聞かせてくれ」
颯介の目が鋭くなるのを見て、澄乃は一度息を整えてから言った。
「先ほどお薬を拝見しましたが、処方の内容が、静花様の症状と合っていないように思われます」
「どういうことだ」
「静花様のご症状を伺うと、体の冷え、倦怠感、食欲の低下、手足の痺れ、頭痛——これらは全て、脾胃の弱りと気血の不足から来るものと考えられます。本来ならば、気を補い、血の巡りを助ける薬が必要なはずです」
「しかし、柴田先生は……」
「柴田先生がどのようにお考えかは存じません。ただ、今の薬に含まれている成分の一つは、強い利尿作用を持ちます。体から水分を大量に排出させる性質のものです。体が弱い方、特に血気が不足している方には、むしろ症状を悪化させるものです」
澄乃はさらに続けた。
「また、別の薬に含まれているものは、少量なら問題ないのですが、長期にわたって服用した場合、消化器に負担をかける可能性があります。食欲不振や吐き気の原因になりうる成分です」
「……つまり、静花の薬は、効いていないどころか、悪化させている、ということか」
「断言はできません。あくまで私の見立てです。ただ……その可能性が高いと、私は思います」
沈黙が落ちた。
颯介は立ち上がり、窓の外を見ると、しばらく動かなかった。
「柴田という医者は、信頼できる人物か、確認が必要だな」
と颯介はやがて言った。
「お前に頼みがある。静花に合う薬を、調合してもらえるか。今すぐ飲ませてやりたい」
「はい。すぐに準備します」
澄乃が静花のために調合した薬は、四君子湯を基にしたもの。
脾胃の機能を回復させ、気力を補う薬方である。
それに体の冷えを和らげる当帰と、血の巡りを助ける生薬を加えた。
静花は薬を見て顔をしかめた。
「こんなもの、飲んでも意味があるの?柴田先生に失礼でしょう」
「静花。頼むから、一度だけ、飲んでみてくれ」
静花は颯介の顔を見て、いやいやながら薬を飲んだ。



