だって、僕は呪われていないし

そんなところに住んでいるからあんな嫌な感じがするのか。

そう思っていると榊は「別に何も変なことは何も起きないよ。大げさだな」と言って笑っていた。
榊の周りの嫌な感じがざわりと動いた気がして思わず目をそらした。

多分きっとあの部屋じゃないんだろう。
そう思うことにした。

目をそらしていたので、榊がこちらを見ていたなんて知らなかった。

* * *

雨が降っていた。
ざあざあと梅雨の嫌な感じの雨が降っていた。

こういう日はすべてが雨の嫌な感じに塗りつぶされて他のものの気配が感じ取りにくくなる。

だから、雨の日は嫌いだ。

ただ、雨が降っているといっても家に帰らなければならない。
しけっぽい廊下を憂鬱な気持ちで通り抜け下駄箱に付くと榊が何やらごそごそやっていた。

「なにしてるの?」

無視して通り抜けるのもなんかヤなやつって気がして話しかける。

「傘がみつからないんだよ」

そう言いながら榊は傘立てから傘を探していた。

盗まれたんじゃねーの?と言おうとしてやめた。
別にうちのクラスはそんないじめじみたことは流行ってないし、うちの学校は思いやりの傘とか言って、ご自由にどうぞという傘コーナーが用意されていた。
傘を忘れても盗む意味がない。

「なら、『思いやりの傘』使って帰ったら?」
「あー、そうする」

榊は思ったよりなんてことない声色で俺は少しほっとした。
傘を誰かに盗まれたかもしれないという落ち込みは少なくともなかった。

何となくそのままというのもと思い、だらだらと一緒に帰るようなノリになった。
あのマンションと俺の家は同じ方角だった。