今日も、明日も。

でもその型は誰が決めたのだろう。誰かが勝手に決めたルールを当然のように強いられ、いつしか守れるかどうかばかりを気にしていた。
しょせん一個人が決めたルールで、犯罪や法律を犯しているわけではないのに。真面目な人間ばかり理不尽なルールを押し付けられているのが現代だ。
「これからは杏奈ちゃんが思うとおりの生き方で生きればいい。世間の型や誰かのルールじゃなく、自分の人生は自分にしか歩めないから。恋愛の形も人それぞれだから、少なくとも俺は愛情を疑ったりしないから」
暖房のきいた暖かい室内と、彼の穏やかで柔らかな優しい栗色の瞳を見ていると、心にじんわりと温かいものが広がる。それと同時に愛しさが込み上げ、なにかが突き動かされそうになるが唾をごくりと呑み込んだ。
二人きりの空間に、今まで守ってきたなにかが綻びそうになる。だけどそれは高校時代のクラスメイトーーあの浅はかで性や本能に忠実で理性がほとんど働いていない人ーーと同類になるのではないかと、まだブレーキがかかる。感情にのみ込まれたらおしまいだと。
「……一つ聞いていいですか?」彼から少し視線を外して言った。
「お、おう。なんなりとどうぞ」
「なんで麗子さんは呼び捨てで、私はちゃん付けなんですか」