「てか君も、麗子みたいになにか事情があるのか?」
少し寂しそうな彼の声音に、私は顔を上げて優斗さんを見た。
柔らかな栗色の髪と同じ色の瞳が真っ直ぐに、だけどどこか切なそうに私を見下ろしている。
「もしかして結婚が決まったとか」
「いえ。さっき母から電話があって、フリーターだったらそろそろ結婚しなさいって」
それから私は両親の家庭方針や過去にあった事を、順番に彼に話していった。分かりづらいこともあったはずなのに途中で中断したり話の腰を折ることはなく、彼は最後まで穏やかで優しい表情で私の話しを聞いてくれた。
営業時間外でドラムの回る音も店内を流れる曲も聞こえてこない。静まり返った店内の椅子に二人で並んで座って話し込むのは、初めてでなんだか新鮮だった。
全て話し終えると一呼吸分黙ったあと、彼が口を開いた。
「うーん……まあ家庭方針や教育方針は人それぞれ、家それぞれだからなぁ。それがガキの頃は理解できない奴もいるし、自分の家が普通だと思うのは仕方ないよな」
「はい。私も厳格な家で育てられた自覚がなかったですし、それが普通だと思っていたので。そもそも周囲とは考え方が合わないというのもありました」
「それと一緒で高校時代の同級生も、自分らの性のペースや考え方を他人に強要したり押しつけるのは、どう考えても間違っている。性欲や情欲、人への好意の表し方は人それぞれで形はない」
「そう、ですよね」
人それぞれ、形がないと言われたのは初めてだった。いつも誰かの“形や普通”があり、型にはまれるかどうか。世間一般や時代時代の型にはまれなければ、普通扱いされずに変人のように言われる。
少し寂しそうな彼の声音に、私は顔を上げて優斗さんを見た。
柔らかな栗色の髪と同じ色の瞳が真っ直ぐに、だけどどこか切なそうに私を見下ろしている。
「もしかして結婚が決まったとか」
「いえ。さっき母から電話があって、フリーターだったらそろそろ結婚しなさいって」
それから私は両親の家庭方針や過去にあった事を、順番に彼に話していった。分かりづらいこともあったはずなのに途中で中断したり話の腰を折ることはなく、彼は最後まで穏やかで優しい表情で私の話しを聞いてくれた。
営業時間外でドラムの回る音も店内を流れる曲も聞こえてこない。静まり返った店内の椅子に二人で並んで座って話し込むのは、初めてでなんだか新鮮だった。
全て話し終えると一呼吸分黙ったあと、彼が口を開いた。
「うーん……まあ家庭方針や教育方針は人それぞれ、家それぞれだからなぁ。それがガキの頃は理解できない奴もいるし、自分の家が普通だと思うのは仕方ないよな」
「はい。私も厳格な家で育てられた自覚がなかったですし、それが普通だと思っていたので。そもそも周囲とは考え方が合わないというのもありました」
「それと一緒で高校時代の同級生も、自分らの性のペースや考え方を他人に強要したり押しつけるのは、どう考えても間違っている。性欲や情欲、人への好意の表し方は人それぞれで形はない」
「そう、ですよね」
人それぞれ、形がないと言われたのは初めてだった。いつも誰かの“形や普通”があり、型にはまれるかどうか。世間一般や時代時代の型にはまれなければ、普通扱いされずに変人のように言われる。

